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刑法総論の定番論証20選|試験頻出パターン

刑法総論の定番論証パターン20選を解説。因果関係、正当防衛、共犯、故意、錯誤、未遂犯など司法試験・予備試験の論文式で頻出の論点を論証テンプレート付きで整理します。

この記事のポイント

刑法総論は犯罪論の体系(構成要件該当性→違法性→責任)を骨格とし、すべての犯罪に共通する基本原理を扱う分野である。司法試験・予備試験では毎年、因果関係・正当防衛・共犯の三大論点を中心に出題が行われる。本記事では、合格者が確実に押さえている定番論証20選を体系的に整理し、論証テンプレートとともに解説する。


構成要件該当性に関する論証8選

1. 因果関係の判断基準

論点の所在

行為と結果との間に因果関係が認められるかの判断基準として、条件説、相当因果関係説、危険の現実化説のいずれを採用するかが問題となる。

判例・通説の立場

近時の判例は、実行行為の危険性が結果として現実化したかという「危険の現実化」の枠組みで因果関係を判断する傾向にある(最決平2・11・20、最決平4・12・17等)。行為の危険性の程度と、介在事情の異常性・寄与度を総合考慮して判断する。

論証テンプレート

因果関係は、実行行為の危険性が結果へと現実化したといえるかによって判断する。本件では、①Bの実行行為には〇〇の危険性が認められるところ、②介在事情である〇〇は〇〇であり、③結果はBの実行行為の危険が現実化したものと評価できる。したがって因果関係が認められる。

出題パターンと注意点

被害者の行為や第三者の行為が介在するパターンが頻出である。介在事情の異常性が高い場合には因果関係を否定する方向に働く。具体的な事実を丁寧に摘示してあてはめを行うことが得点のポイントである。

2. 不真正不作為犯の成立要件

論点の所在

作為義務を負う者が結果を防止しなかった場合に、不作為による犯罪(不真正不作為犯)が成立するための要件が問題となる。

判例・通説の立場

不真正不作為犯の成立には、①作為義務(保障人的地位)の存在、②作為の可能性・容易性、③作為犯との構成要件的同価値性が要件とされる。作為義務の発生根拠としては、法令、契約・事務管理、先行行為、支配領域性などが挙げられる。

論証テンプレート

不作為による殺人罪が成立するためには、作為義務(保障人的地位)が認められることが必要である。作為義務の有無は、法令・契約等の形式的根拠のみならず、先行行為の存在、被害者との関係性、結果発生の支配領域性等を総合考慮して判断する。本件でBには〇〇という事情から作為義務が認められ、〇〇の措置を講じることが可能かつ容易であったにもかかわらずこれをしなかった。かかる不作為は作為による殺人と構成要件的に同価値であり、不作為による殺人罪の構成要件に該当する。

出題パターンと注意点

ひき逃げ事案、保護責任者遺棄致死罪との区別、引き受け型の事案が典型的である。作為義務の認定においては、具体的事実を摘示して論証することが求められる。

3. 故意の認定と未必の故意

論点の所在

犯罪の故意(38条1項)として、どの程度の認識が必要か。認識的要素のみで足りるか、意思的要素(認容)も必要かが問題となる。

判例・通説の立場

判例・通説は、故意の成立には構成要件該当事実の認識・認容が必要であるとする。未必の故意とは、結果発生を確定的に認識してはいないが、その可能性を認識しつつ、あえてこれを認容する心理状態をいう。

論証テンプレート

故意(38条1項)の成立には、構成要件該当事実の認識と認容が必要である。確定的故意だけでなく、結果発生の可能性を認識し、かつ結果が発生してもやむを得ないと認容する心理状態(未必の故意)があれば故意が認められる。本件でBは〇〇を認識しており、〇〇の結果が生じてもやむを得ないと認容していたと認められるため、故意が認められる。

出題パターンと注意点

殺意の認定(殺人の故意と傷害の故意の区別)が最も典型的な出題パターンである。凶器の種類、攻撃部位、攻撃態様等の間接事実から故意を認定する姿勢が求められる。

4. 事実の錯誤(具体的事実の錯誤)

論点の所在

行為者の認識した事実と実際に発生した事実が異なる場合に、故意が阻却されるかが問題となる。客体の錯誤と方法の錯誤の区別、法定的符合説と具体的符合説の対立がある。

判例・通説の立場

判例・通説は法定的符合説を採り、行為者の認識した事実と発生した事実が同一の構成要件の範囲内で符合する限り故意を阻却しないとする。方法の錯誤の場合にも、法定的符合説によれば、同一構成要件内の錯誤として故意は阻却されない。

論証テンプレート

BはAを殺害する意思で発砲したが、弾丸はAに当たらずCに命中しCが死亡した(方法の錯誤)。この場合にBのCに対する殺人の故意が認められるか。故意の成否は、行為者の認識した事実と実際に生じた事実が構成要件の範囲内で符合するか否かにより判断する(法定的符合説)。Bが認識した「人の殺害」と実際に生じた「人の殺害」は殺人罪の構成要件の範囲内で符合するため、BにはCに対する殺人の故意が認められる。

出題パターンと注意点

具体的符合説との対比を意識して論じること。抽象的事実の錯誤(異なる構成要件間の錯誤)との区別も重要である。打撃の錯誤で第三者に結果が生じた場合の処理パターンを正確に身につけること。

5. 抽象的事実の錯誤と罪質の重なり合い

論点の所在

認識した事実と発生した事実が異なる構成要件にまたがる場合(例:窃盗の故意で占有離脱物横領の客体を持ち去った場合)に、故意が認められるかが問題となる。

判例・通説の立場

判例・通説は、異なる構成要件間であっても構成要件が実質的に重なり合う限度で軽い犯罪の故意犯が成立するとする(最判昭54・3・27参照)。重なり合いの範囲は保護法益と行為態様の共通性から判断する。

論証テンプレート

認識事実(窃盗罪)と発生事実(占有離脱物横領罪)は構成要件を異にする。この場合に故意が認められるか。故意責任の本質は反規範的態度に対する非難にあるところ、構成要件が実質的に重なり合う限度で軽い犯罪の故意犯が成立すると解する。窃盗罪と占有離脱物横領罪は、他人の財物を不法に領得する点で保護法益と行為態様が共通し、構成要件が重なり合うといえる。したがって、軽い占有離脱物横領罪の限度で故意犯が成立する。

出題パターンと注意点

殺人の故意で傷害致死の結果が生じた場合(より重い罪の認識で軽い結果が生じた場合)の処理も確認しておくこと。38条2項の解釈と関連する。

6. 早すぎた構成要件の実現(ウェーバーの概括的故意)

論点の所在

第1行為で殺害したと誤信し、犯跡隠滅のためになした第2行為により死亡させた場合に、殺人既遂罪の因果関係と故意が認められるかが問題となる。

判例・通説の立場

判例は、第1行為と第2行為を一連の行為として評価し、第1行為に実行行為性を認めたうえで、第1行為の危険性が結果に現実化したとして因果関係を肯定する(最決平16・3・22「クロロホルム事件」)。

論証テンプレート

第1行為(クロロホルムの吸引)は第2行為(海中への転落)を確実に行うための手段であり、第1行為を開始した時点で殺人に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、第1行為の時点で殺人罪の実行の着手が認められる。そして、第1行為と被害者の死亡との間には因果関係が認められ、Bは第1行為の時点で殺意を有していたから、殺人既遂罪の故意に欠けるところはない。

出題パターンと注意点

実行の着手時期の認定と因果関係の判断がポイントである。第1行為と第2行為の密接性、計画の一体性を具体的事実に基づいて論じること。

7. 実行の着手時期

論点の所在

未遂犯(43条本文)が成立するために必要な「実行に着手」の時期をいかに判断するかが問題となる。

判例・通説の立場

判例は、構成要件該当行為の開始をもって実行の着手を認めるのを原則としつつ、密接な行為についても結果発生の現実的危険性が認められる場合には実行の着手を肯定する。クロロホルム事件(最決平16・3・22)は、第1行為が第2行為の手段として必要不可欠であり密接な関連性がある場合に、第1行為の開始時点で実行の着手を認めた。

論証テンプレート

実行の着手(43条本文)は、構成要件該当行為に密接な行為であって、結果発生の現実的危険性が認められる行為を開始した時点で認められる。本件でBの行為は、〇〇の構成要件該当行為に密接であり、〇〇の結果発生の現実的危険性を有するから、実行の着手が認められる。

出題パターンと注意点

間接正犯における実行の着手時期(利用者基準説と被利用者基準説)、離隔犯における実行の着手時期も重要論点である。

8. 不能犯と未遂犯の区別

論点の所在

結果発生が客観的に不可能であった場合に、不能犯として不可罰となるか、未遂犯として処罰されるかの区別基準が問題となる。

判例・通説の立場

判例は具体的危険説を採り、行為時に一般人が認識しえた事情および行為者が特に認識していた事情を基礎として、一般人の立場から結果発生の危険性が認められるか否かを判断する。

論証テンプレート

不能犯と未遂犯の区別は、行為時に一般人が認識し得た事情および行為者が特に認識していた事情を基礎として、一般人の見地から結果発生の具体的危険性の有無によって判断する(具体的危険説)。本件では、一般人の立場からBの行為を見た場合、〇〇の事情から〇〇の結果が発生する具体的危険性が認められるため、未遂犯が成立する。

出題パターンと注意点

空ピストル事件型、硫黄事件型など古典的な設例を通じて具体的危険説の適用方法を練習しておくこと。客観的危険説との対比も意識すること。


違法性に関する論証4選

9. 正当防衛の要件(36条1項)

論点の所在

正当防衛の要件である「急迫不正の侵害」「防衛するため」「やむを得ずにした行為」の各要件の意義と判断基準が問題となる。

判例・通説の立場

「急迫」とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っていることをいう。侵害の予期があっても直ちに急迫性は否定されないが、積極的加害意思がある場合には急迫性が否定される(最判昭52・7・21)。防衛行為の相当性は、必要最小限度の行為であることを要する。

論証テンプレート

Bの行為に正当防衛(36条1項)が成立するか。まず、「急迫不正の侵害」について、Aの行為は〇〇であり法益侵害の危険が切迫しているといえる。次に、Bが侵害を予期していたとしても、そのことから直ちに急迫性は失われない。もっとも、Bに積極的加害意思が認められる場合には急迫性が否定される。本件でBは〇〇であり、積極的加害意思までは認められないため、急迫性は肯定される。

出題パターンと注意点

平成29年決定(最決平29・4・26)を踏まえた新しい判断枠組み(侵害の予期にとどまらず、行為全般の状況に照らして刑法36条の趣旨に照らし許容されるかを検討する)も理解しておく必要がある。

10. 過剰防衛と量的過剰

論点の所在

正当防衛の相当性を超える行為(質的過剰)と、侵害が終了した後に反撃を継続した場合(量的過剰)の処理が問題となる。

判例・通説の立場

質的過剰は36条2項の過剰防衛として任意的減免の対象となる。量的過剰については、侵害終了後の行為が防衛行為と時間的・場所的に連続し一連の行為と評価できる場合に限り、全体を過剰防衛として処理する(最決平20・6・25参照)。

論証テンプレート

Bの反撃行為は相当性を超えているが、過剰防衛(36条2項)として刑の任意的減免が認められるか。侵害が終了した後の行為については、侵害継続中の防衛行為と時間的・場所的に連続し、一連一体の行為と評価できる場合には、全体について過剰防衛が成立しうる。

出題パターンと注意点

量的過剰の一体性判断のポイントは、行為の時間的近接性、場所的一体性、意思の継続性である。侵害終了の認定自体が争点となることも多い。

11. 誤想防衛と誤想過剰防衛

論点の所在

客観的には急迫不正の侵害が存在しないのに存在すると誤信して反撃した場合(誤想防衛)、および誤想に基づく防衛行為が相当性を超えた場合(誤想過剰防衛)の処理が問題となる。

判例・通説の立場

誤想防衛の場合、正当防衛の客観的要件を欠くため違法性は阻却されないが、事実の錯誤として故意が阻却される(通説)。過失犯の成否は別途検討する。誤想過剰防衛については、36条2項の準用の可否が争われ、肯定説と否定説がある。

論証テンプレート

Bは、急迫不正の侵害が存在しないにもかかわらず存在すると誤信して反撃行為に及んでいる(誤想防衛)。この場合、客観的には正当防衛の要件を欠くため違法性は阻却されないが、Bは正当防衛の基礎となる事実を認識しているから、事実の錯誤として故意が阻却される(38条1項)。もっとも、誤信したことに過失があれば過失犯の成立は妨げられない。

出題パターンと注意点

誤想過剰防衛は論点として難度が高い。36条2項の「防衛の程度を超えた行為」に該当するかを丁寧に検討すること。

12. 被害者の承諾(同意)

論点の所在

被害者の承諾がある場合に犯罪が成立するかについて、構成要件該当性を阻却する場合と違法性を阻却する場合があるかが問題となる。

判例・通説の立場

被害者の承諾は、個人的法益に関する犯罪について違法性を阻却しうる。承諾の有効要件として、承諾能力、承諾の真意性、行為時における承諾の存在が必要である。傷害罪については、承諾があっても社会的相当性を逸脱する場合には違法性は阻却されない(最決昭55・11・13参照)。

論証テンプレート

被害者Aの承諾により違法性が阻却されるか。個人的法益に対する罪について、法益の主体が有効に処分の意思を表示した場合には、法益侵害が存在しないか又は違法性が阻却される。もっとも、傷害罪については、承諾があっても行為が社会的相当性を逸脱する場合には違法性は阻却されない。

出題パターンと注意点

同意殺人罪(202条)との関係、スポーツにおける傷害と承諾の範囲、治療行為と承諾の問題が出題される。承諾に瑕疵がある場合の処理も重要である。


責任に関する論証3選

13. 原因において自由な行為

論点の所在

行為者が自ら心神喪失・心神耗弱の状態を招き、その状態で犯罪を実行した場合に、39条の適用を制限できるかが問題となる。

判例・通説の立場

判例は、原因行為の時点で結果発生に対する故意・過失が認められ、原因行為と結果行為に因果関係が認められる場合に、完全な責任を問いうるとする。理論構成として、間接正犯類似構成と例外モデルの対立があるが、実務上は個別事案ごとの判断が行われている。

論証テンプレート

Bは飲酒により心神喪失の状態に陥り、その状態でAを殺害した。39条1項により責任が阻却されるか。Bが飲酒すれば暴力を振るう性癖があることを認識しつつ自ら飲酒した場合、原因行為(飲酒)の時点で結果発生の現実的危険性を認識しており、原因行為と結果との間に因果関係が認められるから、完全な責任能力を認めうる。

出題パターンと注意点

原因において自由な行為の構造(原因行為→責任無能力状態→結果行為→結果)を明確に示すこと。実行の着手時期との関係も意識する必要がある。

14. 違法性の意識の可能性

論点の所在

行為者に違法性の意識またはその可能性がない場合に故意が阻却されるか、責任が阻却されるかが問題となる。

判例・通説の立場

判例は、違法性の意識の可能性で足りるとし、違法性の意識を欠くことに相当の理由がある場合に限り故意を阻却する(最判昭62・7・16参照)。学説上は、厳格故意説(違法性の意識必要)、制限故意説(違法性の意識の可能性必要)、責任説(故意とは別の責任要素として検討)の対立がある。

論証テンプレート

故意責任の本質は反規範的態度に対する道義的非難にあるところ、反規範的態度とは、自己の行為が違法であることを知りながらあえて行為に出る意思決定を意味する。もっとも、違法性の意識そのものを常に要求すると処罰範囲が不当に狭くなるから、違法性の意識の可能性があれば足りると解する。

出題パターンと注意点

法律の錯誤(違法性の錯誤)と事実の錯誤の区別が重要である。「あたる事実の錯誤」(違法性の錯誤を事実の錯誤に引き直す議論)に注意すること。

15. 過失犯の構造と予見可能性の対象

論点の所在

過失犯の成立要件として、予見可能性の対象をどの程度具体的に特定する必要があるか、および結果回避義務の内容が問題となる。

判例・通説の立場

新過失論は、結果回避義務違反を過失の中核と捉え、予見可能性はその前提要件と位置づける。判例は予見可能性の対象について「具体的な因果経過の基本的部分」の予見可能性で足りるとする傾向にある。

論証テンプレート

過失犯の成立には、結果発生の予見可能性を前提とした結果回避義務違反が必要である。予見可能性の対象は、因果経過の基本的部分であり、細部にわたる具体的予見まで要するものではない。本件でBには〇〇という事実から〇〇の結果が生じうることの予見可能性が認められ、〇〇の措置をとるべき結果回避義務があったにもかかわらずこれを怠ったため、過失が認められる。

出題パターンと注意点

管理・監督過失(火災事故等)、信頼の原則(交通事故等)と組み合わせて出題されることが多い。業務上過失致死傷罪の「業務」の意義も確認しておくこと。


共犯に関する論証5選

16. 共謀共同正犯の成立要件

論点の所在

実行行為を分担しない者が共同正犯(60条)として処罰されるか。共謀共同正犯の成立要件が問題となる。

判例・通説の立場

判例は共謀共同正犯を肯定する(最大判昭33・5・28「練馬事件」)。成立要件は、①共謀(意思の連絡)の存在、②共謀に基づく実行、③正犯意思(自己の犯罪として関与する意思)の3つである。

論証テンプレート

60条の共同正犯は実行行為の分担を要するか。共同正犯の処罰根拠は、犯罪の共同実行による相互利用・相互補充関係に基づく因果性の惹起にある。そうだとすれば、実行行為を直接担当しなくても、共謀を通じて他人の行為を自己の手段として犯罪を実現した者は共同正犯として責任を負うべきである。すなわち、①二人以上の者の間に共謀が成立し、②共謀に基づいて一部の者が実行に及び、③当該行為者に正犯意思が認められる場合には、共謀共同正犯が成立する。

出題パターンと注意点

「黙示の共謀」の認定、共謀の射程(共謀の範囲を超える行為への帰責の有無)が特に重要である。暴力団の上部者の共謀共同正犯の成否なども典型的な出題パターンである。

17. 共犯の離脱(共犯関係の解消)

論点の所在

共犯者の一人が犯行の途中で離脱した場合に、離脱後に他の共犯者が行った行為の結果について帰責されるかが問題となる。

判例・通説の立場

判例は、共犯の離脱が認められるためには、共犯者が離脱の意思を他の共犯者に伝え、他の共犯者がこれを了承するだけでは足りず、自己の行為による因果的寄与を解消することが必要であるとする(最決平21・6・30参照)。物理的因果性と心理的因果性の両面から因果的寄与の解消を検討する。

論証テンプレート

共犯の離脱が認められるためには、離脱者がそれまでに与えた因果的影響を解消することが必要である。物理的因果性の解消としては〇〇、心理的因果性の解消としては〇〇が考慮される。本件でBは離脱の意思を表明したものの、Bがそれまでに与えた物理的な因果的寄与(〇〇)が解消されたとはいえないため、離脱は認められず、Bは離脱後の結果についても帰責される。

出題パターンと注意点

着手前の離脱と着手後の離脱で離脱の要件が異なる。着手後はより強度の因果的寄与の解消が必要である。凶器の提供、計画の策定など、先行行為の態様ごとに因果的寄与の解消の程度を具体的に検討すること。

18. 承継的共同正犯

論点の所在

先行者の犯行の途中から後行者が共謀に加わった場合に、後行者が先行者の既に行った行為やその結果について共同正犯としての責任を負うかが問題となる。

判例・通説の立場

判例は、先行者が暴行を加えて反抗を抑圧した後に後行者が共謀に加担して金品を強取した事案で、後行者に強盗罪の共同正犯の成立を認めた(最決平24・11・6)。もっとも、後行者が関与した以降の暴行による傷害結果のみを帰責すべきであるとの限定を加えている。

論証テンプレート

後行者Cは、先行者Bが既に暴行を加えた後の段階から共謀に加担している。Cは先行者の暴行結果について共同正犯としての責任を負うか。共同正犯の処罰根拠は共同実行による因果的寄与にあるところ、後行者は自己の関与以前の事実には因果的影響を及ぼしえない。したがって、後行者は原則として先行者が既に生じさせた結果についてまで共同正犯の責任を負わない。

出題パターンと注意点

強盗罪の事案が最も典型的である。先行者の暴行結果を利用する意思があったかどうかの認定がポイントとなる。傷害結果の帰責範囲を限定する判例の立場を正確に理解すること。

19. 共犯と身分(65条)

論点の所在

65条1項と2項の関係をいかに解するか。特に、真正身分犯と不真正身分犯の区別基準、および非身分者に身分犯の共犯が成立する場合の法律効果が問題となる。

判例・通説の立場

通説は、65条1項は真正身分犯(身分が犯罪の成立要件となる犯罪)について非身分者にも共犯の成立を認める規定、65条2項は不真正身分犯(身分が刑の軽重に関わる犯罪)について非身分者には通常の刑を科す規定と解する。判例もこの解釈をとる(最判昭31・5・24)。

論証テンプレート

非身分者Bが身分者Aの犯行に加功した場合、Bに共犯が成立するか。65条1項は「犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したとき」と規定し、真正身分犯について非身分者の共犯成立を認める。同条2項は「身分によって特に刑の軽重があるとき」に非身分者には通常の刑を科すと規定し、不真正身分犯における科刑の問題を扱う。

出題パターンと注意点

業務上横領罪(真正身分犯)と横領罪の共犯関係、常習累犯窃盗罪の共犯関係が典型例である。65条の解釈は学説の対立が激しい分野であるが、通説の立場で一貫して論じることが重要である。

20. 共犯の処罰根拠と因果的共犯論

論点の所在

正犯なき共犯(教唆犯・幇助犯は正犯の実行なくして処罰されるか)、共犯の従属性の程度が問題となる。

判例・通説の立場

判例・通説は制限従属性説を採り、共犯の成立には正犯の構成要件該当性と違法性が必要であるが、責任は不要とする。共犯の処罰根拠は、正犯を通じて間接的に法益侵害を惹起した点にある(因果的共犯論・惹起説)。

論証テンプレート

共犯の処罰根拠について検討する。共犯は正犯を介して間接的に法益侵害を惹起した点に処罰根拠がある(因果的共犯論)。そして、共犯の従属性の程度については、正犯行為が構成要件に該当し違法であれば足り、正犯に責任があることまでは要しないと解する(制限従属性説)。

出題パターンと注意点

責任能力のない者を利用した場合に間接正犯か教唆犯かの区別が問われる。因果的共犯論の立場からの幇助犯の因果関係(心理的因果性で足りるか)も論点となる。


体系的な答案構成のコツ

犯罪論の体系に沿って論じる

刑法の答案は、構成要件該当性→違法性阻却事由→責任阻却事由の順序で検討する。この体系を崩さないことが、答案の論理的一貫性を保つ鍵である。

罪名ごとに検討する

複数の犯罪が成立しうる場合には、重い罪から順に検討するのが原則である。各犯罪について構成要件該当性から順に検討し、罪数処理を最後に行う。

事実のあてはめを厚くする

規範を示した後のあてはめにおいて、問題文の事実を具体的に摘示して評価することが高得点の条件である。結論だけを述べるのではなく、事実の評価を丁寧に行うこと。


まとめ

刑法総論の論証は、犯罪論の体系的理解が前提となる。因果関係の危険の現実化、正当防衛の急迫性、共謀共同正犯の成立要件など、毎年のように出題される論点を論証テンプレートとして身につけたうえで、事案に即した柔軟なあてはめができるようになることが合格への道である。


よくある質問(FAQ)

Q1. 刑法総論と各論はどちらを先に学習すべきですか?

総論を先に学習すべきである。犯罪論の体系(構成要件該当性・違法性・責任)を理解しないと各論の論点を体系的に位置づけることができない。ただし、各論の基本的な犯罪類型(殺人・窃盗・詐欺)を具体例として参照しながら総論を学ぶのが効率的である。

Q2. 因果関係の論証は相当因果関係説と危険の現実化のどちらで書くべきですか?

近時の判例は危険の現実化の枠組みを採用しているため、危険の現実化で論じるのが望ましい。もっとも、相当因果関係説の論証パターンも理解しておくと、判例の流れを説明する際に役立つ。

Q3. 共犯論はどこまで覚えるべきですか?

共謀共同正犯の成立要件、共犯の離脱、承継的共同正犯、共犯と身分は最低限押さえるべきである。これに加えて、間接正犯との区別、共犯の錯誤、共犯と正当防衛なども頻出であるため、余裕があれば準備しておくこと。

Q4. 正当防衛の論証で平成29年決定はどの程度意識すべきですか?

平成29年決定は侵害の急迫性の判断枠組みに大きな変更をもたらした重要判例である。従来の積極的加害意思論だけでなく、行為全般の状況に照らした判断を求める枠組みを理解しておくべきである。

Q5. 学説の対立が多い分野ではどの説で書けばよいですか?

判例・通説の立場で一貫して書くのが最も安全である。異なる説を採る場合でも、論理的に一貫していれば評価される。ただし、試験では結論の妥当性よりも論理の一貫性と事実のあてはめが重視される。


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