一事不再理と公訴時効|二重の危険の禁止と公訴権の消滅
一事不再理と公訴時効を解説。一事不再理効の範囲、二重の危険の禁止、公訴時効の起算点と停止、公訴権濫用論を整理します。
この記事のポイント
一事不再理効は確定判決の効力として同一事件の再訴を禁止するものであり、公訴時効は一定期間の経過により公訴権を消滅させる制度である。
一事不再理
憲法上の根拠
憲法39条:何人も、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。
一事不再理効の範囲
基準 内容 公訴事実の同一性 確定判決を経た事実と公訴事実の同一性がある事実 判例 基本的事実関係の同一性で判断二重の危険の禁止
学説 内容 一事不再理説 確定判決後の再訴を禁止 二重の危険説 同一の危険(刑事手続)に二重にさらされることを禁止検察官上訴の合憲性
判例 内容 最大判昭25.9.27 検察官上訴は憲法39条に違反しない(一事不再理は確定判決を前提)公訴時効
時効期間(250条)
法定刑 時効期間 死刑に当たる罪 公訴時効なし(2010年改正) 無期懲役・禁錮 30年 長期20年以上 20年 長期15年以上 15年 長期15年未満 10年 長期10年未満 7年 長期5年未満 5年 長期5年未満の罪(罰金) 3年 拘留・科料 1年人を死亡させた罪の特例(2010年改正)
殺人罪等の人を死亡させた罪で死刑に当たるものは公訴時効が廃止された。
起算点
原則 犯罪行為が終わった時(253条1項) 共犯 最終の行為が終わった時(253条2項)時効の停止
停止事由 条文 公訴の提起 254条1項 共犯の一人に対する公訴提起 254条2項 犯人が国外にいる場合 255条1項公訴権濫用論
問題の所在
検察官の公訴提起が権限の濫用に当たる場合、公訴を棄却できるか。
最決昭55.12.17(チッソ水俣病事件)
公訴の提起が公訴権の濫用に当たるとして公訴棄却が認められるのは、公訴提起自体が職務犯罪を構成するような極限的な場合に限られる。
まとめ
- 一事不再理効は公訴事実の同一性の範囲で及ぶ
- 検察官上訴は合憲(一事不再理は確定判決が前提)
- 殺人罪等は公訴時効が廃止された(2010年改正)
- 公訴時効の起算点は犯罪行為が終わった時
- 公訴権濫用は極限的な場合にのみ認められる