1国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
2前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。
この条文の過去問 51問
誤り。違うのは「その公務員も損害を被った者に対する直接の賠償責任を負う」の部分である。賠償責任を負うのは国又は公共団体であり、公務員個人は故意又は重大な過失があっても被害者に直接責任を負わない。
国家賠償法1条1項は、公権力の行使に当たる公務員が職務を行うについて故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うと定めるにとどまり、加害公務員個人が被害者に直接責任を負うとは定めていない。最判昭30.4.19は、公務員個人は被害者に対して直接その責任を負うものではないとした。責任を国又は公共団体に集中させたのは、被害者が確実に賠償を得られるようにし、公務員が個人責任を恐れて職務の遂行に萎縮しないようにするためである。公務員に故意又は重大な過失があった場合の扱いは同条2項が定めており、国又は公共団体が賠償をしたうえで当該公務員に求償することができるにすぎない。2項が故意又は重大な過失のときの求償権をわざわざ定めていることは、その場合でも被害者に対する賠償義務がまず国又は公共団体にあることを前提にしており、公務員個人の直接責任を否定する根拠になる。本肢は求償の要件である故意又は重大な過失を、公務員個人の直接責任の要件に読み替えている。

国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。/前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。
- 賠償義務者: 国又は公共団体(1項)。公務員個人は被害者に直接責任を負わない(最判昭30.4.19)
- 求償: 公務員に故意又は重大な過失があったときに限り、国又は公共団体が公務員に求償できる(2項)。軽過失では求償できない
- 選任監督者と費用負担者が異なるとき: 被害者はいずれにも請求できる(3条1項)。内部の求償は3条2項
- 民法の適用: 国賠法に定めのない事項は民法による(4条)。失火責任法も適用される(最判昭53.7.17)
- 相互保証: 外国人は相互の保証があるときに限り適用(6条)
正しい。「その職務を行うについて」は客観的に職務執行の外形を備えるかで判断され、市議会議員の議会内の一般質問における発言は、その内容にかかわらず職務を行うについてされたものに当たる。
国家賠償法1条1項の「その職務を行うについて」とは、公務員が主観的に権限行使の意思をもってした職務執行に限らず、自己の利をはかる意図でした場合でも、客観的に職務執行の外形を備える行為をした場合を含む(最判昭31.11.30、外形標準説)。外形で判断するのは、被害者から見て職務執行と区別できない行為による損害を広く救済する趣旨である。市議会議員が議会の会議で行う一般質問は、議員に認められた権能の行使そのものであり、職務執行の外形を明らかに備えるから、発言によって他人の名誉が害されるなど内容に問題がある場合でも職務関連性は否定されない。最判平15.2.17は、市議会議員が議会内における一般質問の際に行った発言は、その発言内容にかかわらず職務を行うについてされたものと認められるとした。発言内容の当否は、同項の違法性や故意過失という別の要件で判断される事柄であり、職務関連性という入口の要件を左右しない。国会議員の国会での発言の違法性を別途論じた最判平9.9.9も、この区別に立っている。

「その職務を行うについて」とは、客観的に職務執行の外形を備える行為をした場合をいうと解すべきであるから…、市議会議員が議会内における一般質問の際に行った発言は、その発言内容にかかわらず、職務を行うについてされたものと認められる。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 非番の警察官が制服で職務質問を装い金品を奪って殺害 | 最判昭31.11.30 | 客観的に職務執行の外形を備えるから職務を行うについてに当たる。国が賠償 |
| 市議会議員の議会内の一般質問における発言 | 最判平15.2.17 | 発言内容にかかわらず職務を行うについてに当たる。内容の当否は違法性・過失で判断 |
| 国会議員の国会質疑における発言 | 最判平9.9.9 | 1条1項の適用を前提に、違法と評価されるのは職務とかかわりなく違法又は不当な目的で事実を摘示するなど特別の事情がある場合に限る |
| 公務員が職務と無関係に私生活で加害 | 通説 | 外形も備えないから職務を行うについてに当たらない。民法709条 |
誤り。違うのは「障害が生じる一般的、抽象的おそれがあることから、刑務所長が信書の発信を不許可としたことは違憲ではない」の部分である。判例は相当の蓋然性がある場合に限り制限できるとし、不許可を監獄法と国家賠償法の適用上違法とした(最判平18.3.23)。
最判平18.3.23は、受刑者が親族でない者に宛てた信書の発信を刑務所長が不許可とした事案で、受刑者とその親族でない者との間の信書の発受は、受刑者の性向、行状、監獄内の管理、保安の状況、当該信書の内容その他の具体的事情の下で、これを許すことにより監獄内の規律及び秩序の維持、受刑者の身柄の確保、受刑者の改善、更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当のがい然性があると認められる場合に限って制限することが許されるとした。一般的、抽象的なおそれだけで制限を認めれば、発信の自由が施設側の裁量に丸ごと委ねられるからである。そのうえで判例は、刑務所長がこのがい然性の有無を考慮しないで不許可としたことは明らかであるとして、当該不許可は裁量権の範囲を逸脱し又は濫用したものとして監獄法46条2項の適用上違法であり、国家賠償法1条1項の適用上も違法であると結論づけた。法令の適用上の違法を認めたのであって、違憲か否かは明言していない。本肢は、抽象的なおそれを理由に不許可を是認したとする点でも、違憲ではないとしたとする点でも、判旨と逆である。

受刑者のその親族でない者との間の信書の発受は、受刑者の性向、行状、監獄内の管理、保安の状況、当該信書の内容その他の具体的事情の下で、これを許すことにより、監獄内の規律及び秩序の維持、受刑者の身柄の確保、受刑者の改善、更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当のがい然性があると認められる場合に限って、これを制限することが許されるものというべきであり、その場合においても、その制限の程度は、上記の障害の発生防止のために必要かつ合理的な範囲にとどまるべき
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 未決拘禁者の喫煙禁止 | 最大判昭45.9.16 | 喫煙の自由は13条の権利に含まれるとしてもあらゆる時、所で保障されるものではない。火災や通謀のおそれから禁止は必要かつ合理的で合憲 |
| 未決拘禁者の新聞記事の抹消(よど号ハイジャック記事抹消事件) | 最大判昭58.6.22 | 閲読の自由は19条・21条の派生原理として憲法上保障される。制限は一般的、抽象的なおそれでは足りず、規律及び秩序の維持上放置できない程度の障害が生ずる相当の蓋然性を要する |
| 受刑者の親族でない者への信書発信の不許可 | 最判平18.3.23 | 放置できない程度の障害が生ずる相当の蓋然性がある場合に限り制限できる。考慮しないでした不許可は監獄法・国賠法の適用上違法(違憲かは判断していない) |
正しい。判例は在外国民の選挙権を制限する立法不作為について国家賠償請求を認め、次回の選挙で選挙権を行使する権利を有することの確認の訴えも公法上の法律関係に関する確認の訴えとして適法とした(最大判平17.9.14)。
最大判平17.9.14は、在外国民に国政選挙での投票を認めず、法改正後も在外選挙の対象を比例代表選出議員の選挙に限っていたことについて、選挙権の制限は、それなしには選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不可能ないし著しく困難と認められるやむを得ない事由がない限り許されないとして、憲法15条1項及び3項等に違反すると判断した。そのうえで、憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合には、例外的に立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるとし、本件で国家賠償請求を認容した。さらに判例は、次回の選挙で選挙区選出議員の選挙につき投票できる地位にあることの確認を求める訴えを、公法上の法律関係に関する確認の訴えとして確認の利益を肯定し、請求を認容した。金銭賠償だけでは将来の権利行使そのものは確保されないからである。本肢は判例の二つの救済をそのまま述べており、正しい。

国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けるものというべきである。
- 国家賠償請求:立法の内容又は立法不作為が憲法上の権利を違法に侵害することが明白な場合や、権利行使の機会を確保する立法措置が必要不可欠で明白なのに国会が正当な理由なく長期にわたって怠る場合に、例外的に違法となる(最大判平17.9.14)
- 確認の訴え:次回の選挙で選挙権を行使できる地位にあることの確認は、公法上の法律関係に関する確認の訴えとして適法(同判決)
- 違憲確認訴訟:立法不作為そのものの違憲確認を求める訴えは、具体的事件性を欠き認められない
正しい。在外日本人選挙権訴訟(最大判平17.9.14)は、立法不作為を理由とする国家賠償請求を認めるとともに、次回の選挙で選挙区選出議員の選挙に投票できる地位にあることの確認を求める訴えを公法上の法律関係に関する確認の訴えとして適法とし、これを認容した。
在外日本人選挙権訴訟(最大判平17.9.14)は、在外選挙の対象を比例代表選出議員の選挙に限定していた公職選挙法について、選挙権の制限にはやむを得ない事由がなければならないとして、憲法15条1項・3項、43条1項、44条ただし書に違反すると判断した。そのうえで、憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠でそれが明白であるのに国会が正当な理由なく長期にわたって怠った場合には、例外的に立法不作為は国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるとして、国家賠償請求を認容した。加えて、次回の衆議院議員総選挙の小選挙区選出議員の選挙と参議院議員通常選挙の選挙区選出議員の選挙で投票をすることができる地位にあることの確認を求める訴えを、公法上の法律関係に関する確認の訴え(行政事件訴訟法4条後段)として確認の利益を認めて適法とし、請求を認容した。金銭賠償にとどまらず将来の権利行使そのものを確保する救済を認めた点に意義がある。

立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けるものというべきである。
- 国家賠償請求:立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法となるかを争う。立法内容の違憲性とは区別して判断される(最大判平17.9.14)
- 確認の訴え:次回の選挙で選挙権を行使できる地位にあることの確認など、公法上の法律関係に関する確認の訴え(行政事件訴訟法4条後段)として提起できる
- 違憲確認訴訟:立法不作為そのものの違憲確認を求める訴えは、具体的事件性を欠くとして認められない
- 在宅投票制度廃止事件(最判昭60.11.21):憲法の一義的な文言に違反するのにあえて立法する場合に限り違法とし、賠償を否定した
正しい。憲法上保障された権利行使の機会を確保する立法措置が必要不可欠で明白であるのに、国会が正当な理由なく長期にわたって怠る場合、立法不作為は国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受ける(最大判平17.9.14)。
最判昭60.11.21は、国会議員は立法に関し原則として国民全体に対する政治的責任を負うにとどまるから、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているのにあえて立法を行うような例外的な場合でない限り、立法行為は国家賠償法1条1項の適用上違法にならないとしていた。最大判平17.9.14はこの定式を改め、立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に違法の評価を受けるとし、在外国民の投票を全国的な選挙で認めていなかった立法不作為について賠償責任を肯定した。国家賠償法上の違法は職務上の法的義務違反の問題であるから、立法内容の違憲性がそのまま違法になるのではなく、国会に求められる行動の義務違反を測る枠が置かれている。最大判令4.5.25も同じ枠組みで在外国民の国民審査権について賠償を認めた。

立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けるものというべきである。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 国会議員の立法行為・立法不作為 | 最判昭60.11.21、最大判平17.9.14、最大判令4.5.25 | 権利侵害が明白、又は必要不可欠で明白な立法措置を正当な理由なく長期に怠る場合に限り違法 |
| 税務署長の更正処分 | 最判平5.3.11 | 過大認定だけでは違法でなく、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさず漫然と更正したときに違法 |
| 検察官の公訴提起 | 最判昭53.10.20 | 無罪確定でも当然に違法ではなく、起訴時の証拠資料を総合して合理的判断ができないときに違法 |
| 裁判官の裁判 | 最判昭57.3.12 | 上訴で是正されるべきもので、権限の趣旨に明らかに背いて行使したなど特別の事情が要る |
誤り。違うのは「各公務員の責任割合に応じた分割債務として」の部分である。共同して故意で違法行為をした公務員らは、国に対し連帯して求償債務を負う(最判令2.7.14)。
国家賠償法1条2項は、公務員に故意又は重大な過失があったときは、国又は公共団体はその公務員に求償権を有すると定める。複数の公務員が共同して違法行為をし、国が被害者に賠償した場合の求償債務の性質について、最判令2.7.14は、公権力の行使に当たる複数の公務員が、その職務を行うについて、共同して故意によって違法に他人に加えた損害を国又は公共団体が賠償したときは、当該公務員らは国又は公共団体に対し連帯して求償債務を負うとし、責任割合に応じた分割債務とした原審の判断を否定した。共同して故意に加害した公務員らは国との関係でも一体を成すというべきであり、一部の者が無資力などで弁済できないとしても、その危険は国ではなく公務員らが負担するのが公平だからである。分割債務にすると、無資力の公務員の分だけ国が最終的に損失を抱え、故意の加害者を公金で保護する結果になる。求償を故意又は重大な過失のある場合に限るのは公務員の職務の萎縮を防ぐためであるが、共同の故意がある場面ではその配慮は働かない。本肢は連帯債務を分割債務に置き換えている点が誤りである。

国又は公共団体の公権力の行使に当たる複数の公務員が、その職務を行うについて、共同して故意によって違法に他人に加えた損害につき、国又は公共団体がこれを賠償した場合においては、当該公務員らは、国又は公共団体に対し、連帯して国家賠償法1条2項による求償債務を負うものと解すべきである。
- 要件: 加害公務員に故意又は重大な過失があること。軽過失では求償できない
- 趣旨: 公務員の職務執行が萎縮しないよう、求償の場面を絞る
- 共同故意の場合: 公務員らは国に対し連帯して求償債務を負う(最判令2.7.14)。分割債務ではない
- 被害者との関係: 被害者は公務員個人には請求できず、国又は公共団体に請求する(最判昭30.4.19)
- 3条2項の求償: 費用負担者が賠償したときは、内部関係で損害を負担すべき者に求償する
誤り。違うのは末尾の「議員が国会で行った質疑等において個人の名誉を毀損する発言を行っても責任を問われることはないので、国が賠償責任を負うこともない」の部分である。特別の事情があれば国は責任を負う。
国家賠償法1条1項の責任は、判例上、公務員個人の責任を国が肩代わりする代位責任と解され、加害公務員個人は被害者に直接責任を負わない(最判昭30.4.19)。肢の前段はこの理解に沿う。しかし51条の免責特権は、議員が議院で行った演説、討論又は表決について院外で責任を問われないとするもので、免責されるのは議員個人の民事・刑事上の責任であり、国自身の賠償責任まで当然に否定する規定ではない。最判平9.9.9は、質疑等で何をどのような形で取り上げるかは国会議員の広範な裁量に委ねられ、結果的に個別の国民の権利等が侵害されても直ちに職務上の法的義務違背とはいえないとしつつ、当該議員がその職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示し、あるいは虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、付与された権限の趣旨に明らかに背いて行使したと認め得る特別の事情があれば、国の賠償責任が肯定されるとした。肢は、国の責任が生じる余地を一切否定する点で判例の趣旨に反する。

国会議員が国会で行った質疑等において、個別の国民の名誉や信用を低下させる発言があったとしても、これによって当然に国家賠償法一条一項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が生ずるものではなく、右責任が肯定されるためには、当該国会議員が、その職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示し、あるいは、虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、国会議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があることを必要とする。
- 免責の対象:演説・討論・表決のほか、国会における意見の表明とみられる行為や職務行為に付随する行為
- 免責の内容:議員個人の刑事責任と民事責任。議院による懲罰や政党による処分は免責されない
- 国の賠償責任:議員個人は免責されるが、権限の趣旨に明らかに背いて行使したと認め得る特別の事情があれば国が国家賠償法1条1項の責任を負う(最判平9.9.9)
- 地方議会議員には免責特権も不逮捕特権も及ばない
誤り。違うのは末尾の「国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害することが明白な場合であっても、国会議員の立法行為が国家賠償法上の違法の評価を受けることはない」の部分である。判例はまさにその場合に例外的な違法を認める。
最判昭60.11.21(在宅投票制度廃止事件)は、立法行為が国家賠償法上違法となるかは立法の内容の違憲性の問題とは区別されるべきであり、立法行為は本質的に政治的なもので、その適否を法的に評価することは原則として許されないとした。肢の前段はこの判示に沿う。しかし同判決も、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているのに国会があえて立法するというごとき例外的な場合には違法の評価を受け得ることを認めており、およそ違法にならないとしたわけではない。さらに最大判平17.9.14(在外日本人選挙権訴訟)は、立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、権利行使の機会を確保するための立法措置が必要不可欠でそれが明白なのに国会が正当な理由なく長期にわたって怠る場合などには、例外的に立法行為又は立法不作為が違法の評価を受けると判示し、実際に国の賠償責任を肯定した。肢の後段は、判例が例外として挙げた場合をそのまま否定している。

立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けるものというべきである。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 在宅投票制度の廃止と不復活 | 最判昭60.11.21 | 憲法の一義的な文言に違反するのにあえて立法するような例外的な場合でない限り違法の評価を受けない |
| 在外国民の選挙権行使を制限する公職選挙法の放置 | 最大判平17.9.14 | 権利の侵害が明白な場合や、必要不可欠で明白な立法を正当な理由なく長期に怠る場合は例外的に違法。賠償を認容 |
| 女性の再婚禁止期間(6か月)の放置 | 最大判平27.12.16 | 100日を超える部分は違憲だが、違憲が明白だったとはいえず国家賠償法上の違法はない |
誤り。違うのは末尾の「国家賠償法第1条第1項にいう「公権力の行使」に該当しない」の部分である。
国家賠償法1条1項の「公権力の行使」については、国又は公共団体の作用のうち、純粋な私経済作用と同法2条が対象とする公の営造物の設置管理作用を除く一切の作用を含むとする広義説が判例・通説である。行政処分や強制執行のような権力的作用に限らず、行政指導や公立学校の教育活動のような非権力的な公行政作用も含まれる。最判昭62.2.6は、公立中学校の体育の授業中に生徒が負傷した事案で、国家賠償法1条1項にいう公権力の行使には公立学校における教師の教育活動も含まれると判示し、教師の指導監督上の過失による損害について同項に基づく市の責任を認めた。市立学校は市が設置する公立学校であり、そこで教育活動を行う教師は地方公務員として職務を行う公務員であるから、市立学校であることはこの結論を変えない。私立学校の教師の教育活動には国家賠償法の適用がなく、学校法人の使用者責任(民法715条)などの問題になるが、本肢は市立学校の事案であり、これと区別される。

国家賠償法一条一項にいう「公権力の行使」には、公立学校における教師の教育活動も含まれるものと解するのが相当である。
| 説 | 範囲 | 扱い |
|---|---|---|
| 狭義説 | 命令・強制を伴う権力的作用に限る | 非権力的な活動は民法による |
| 広義説(判例・通説) | 純粋な私経済作用と2条の営造物の設置管理作用を除く一切の公行政作用 | 公立学校の教育活動(最判昭62.2.6)、行政指導(最判平5.2.18)も含む |
| 最広義説 | 私経済作用も含めすべての作用 | 市立病院の医療行為なども1条による |
正しい。国家賠償法1条1項の「その職務を行うについて」は公務員の主観ではなく客観的な職務執行の外形で判断され、自己の利を図る意図で職務執行を装った行為も含まれる(最判昭31.11.30)。
国家賠償法1条1項は、公務員が「その職務を行うについて」違法に他人に損害を加えたことを要件とする。最判昭31.11.30は、非番の警察官が制服を着用して職務質問を装い、犯罪の証拠物名義で被害者の所持品を預かった上、これを不法に領得する目的で拳銃を発射して被害者を殺害した事案で、同項は、公務員が主観的に権限行使の意思をもってする場合に限らず、自己の利をはかる意図をもってする場合でも、客観的に職務執行の外形をそなえる行為をしてこれによって他人に損害を加えた場合には国又は公共団体に賠償責任を負わせ、広く国民の権益を擁護することを立法の趣旨とすると述べて、国の責任を認めた。職務関連性を公務員の内心ではなく行為の客観的な外形で判断するこの立場は外形標準説と呼ばれる。被害者から見れば制服の警察官による職務質問は本物の職務行為と区別できず、公務員の内心の目的で救済の有無が左右されるのは同項の被害者救済の趣旨に合わないからである。本肢はこの判例の事案と判示をそのまま述べている。

公務員が主観的に権限行使の意思をもつてする場合にかぎらず自己の利をはかる意図をもつてする場合でも、客観的に職務執行の外形をそなえる行為をしてこれによつて、他人に損害を加えた場合には、国又は公共団体に損害賠償の責を負わしめて、ひろく国民の権益を擁護することをもつて、その立法の趣旨とするものと解すべきである。
- 判断基準は客観的な職務執行の外形であり、公務員の権限行使の意思や内心の目的は問わない(外形標準説、最判昭31.11.30)
- 非番の警察官が制服で職務質問を装い私利を図った行為も職務関連性がある
- 議員の議場での発言は内容にかかわらず職務を行うについてに当たる
- 賠償責任を負うのは国又は公共団体であり、公務員個人は故意・重過失があっても被害者に直接責任を負わない(最判昭30.4.19)
誤り。違うのは末尾の「使用者は同法第715条に基づく損害賠償責任を負う」の部分である。被用者の行為が公権力の行使に当たり国又は公共団体が国家賠償法1条1項の責任を負うときは、被用者個人が民法709条の責任を負わないだけでなく、使用者も民法715条の責任を負わない(最判平19.1.25)。
最判平19.1.25は、社会福祉法人が運営する児童養護施設の職員による養育監護行為が県の公権力の行使に当たる公務員の職務行為と認められた事案で、国家賠償法1条1項は、公務員が職務を行うについて故意又は過失によって違法に他人に損害を与えた場合には国又は公共団体が賠償の責めに任じ、公務員個人は民事上の損害賠償責任を負わないこととしたものと解されると述べたうえ、この趣旨からすれば、国又は公共団体以外の者の被用者の行為が公権力の行使に当たるとして国又は公共団体が同項の責任を負うときは、被用者個人が民法709条の責任を負わないのみならず、使用者も民法715条の責任を負わないとした。国家賠償法1条1項の公務員は身分上の公務員に限られず、公権力の行使を委ねられた私人やその被用者も含まれる。同項の責任は公務員個人の責任を国又は公共団体が引き受けて責任を集中させる構造であり、被用者個人の責任が否定される以上、それを前提とする使用者の代位責任も成立しないという理屈である。本肢は、個人責任を否定しながら使用者責任だけを残しており、判例の結論に反する。

国又は公共団体以外の者の被用者が第三者に損害を加えた場合であっても、当該被用者の行為が国又は公共団体の公権力の行使に当たるとして国又は公共団体が被害者に対して同項に基づく損害賠償責任を負う場合には、被用者個人が民法709条に基づく損害賠償責任を負わないのみならず、使用者も同法715条に基づく損害賠償責任を負わないと解するのが相当である。
- 公務員個人: 被害者に対して直接の責任を負わない。故意や重過失があっても同じ(最判昭30.4.19)
- 求償: 公務員に故意又は重大な過失があったときに限り、国又は公共団体が求償できる(1条2項)
- 公権力の行使を委ねられた私人: 国家賠償法1条1項の公務員に含まれ、国又は公共団体が責任を負う
- その使用者: 被用者個人が民法709条の責任を負わない以上、使用者も民法715条の責任を負わない(最判平19.1.25)
誤り。違うのは「建築物の所有者が有する財産上の利益は法律上保護された利益ではないから」の部分である。建築確認制度は建築主の利益の保護も含み、建築主事が職務上の注意義務を怠って不適合を看過すれば国家賠償法上違法になり得る(最判平25.3.26)。
建築基準法1条は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて国民の生命、健康及び財産の保護を図ることを目的と掲げており、財産上の利益の保護も目的に含まれる。建築確認(6条)は、建築計画が建築基準関係規定に適合するかを審査し、基準に適合しない建築物が建てられることを未然に防ぐ制度である。最判平25.3.26は、建築確認制度の目的には、違反建築物の出現を未然に防止することを通じて得られる個別の国民の利益の保護が含まれ、建築主の利益の保護もこれに含まれるとした。その上で、建築主事が職務上通常払うべき注意をもって申請書類の記載を確認していれば不適合を発見できたのに、その注意を怠って漫然と看過した結果建築確認を行ったと認められる場合には、国家賠償法1条1項の適用上違法になるとした。したがって、所有者の財産上の利益は保護されず賠償責任がおよそ認められないとする肢は誤っている。なお同判決は、当該事案では漫然と看過したとはいえないとして責任を否定しており、義務違反の有無は個別に判断される。

建築主事が職務上通常払うべき注意をもって申請書類の記載を確認していればその記載から当該計画の建築基準関係規定への不適合を発見することができたにもかかわらずその注意を怠って漫然とその不適合を看過した結果当該計画につき建築確認を行ったと認められる場合に、国家賠償法1条1項の適用上違法となる。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 所得税の更正が過大認定だった | 最判平5.3.11 | 処分の違法と国賠法上の違法は別。資料を収集し課税要件事実を認定する上で職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさず漫然と更正した場合に違法(職務行為基準説) |
| 建築確認をした建築物に欠陥があり所有者が損害 | 最判平25.3.26 | 建築確認制度は建築主の財産上の利益も保護する。職務上通常払うべき注意で申請書類を確認すれば不適合を発見できたのに漫然と看過した場合に違法(結論は責任否定) |
| 法律の委任の範囲を超える監獄法施行規則に基づく接見不許可 | 最判平3.7.9 | 規則は無効で処分は違法。しかし長年疑いなく運用され裁判上も問題にされなかったから、委任の範囲を超えることを容易に理解できたとはいえず、過失なし |
| 無罪が確定した被告人が起訴を違法と主張 | 最判昭53.10.20 | 無罪判決が確定しても起訴が直ちに違法になるわけではない。起訴時の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば適法 |
| 固定資産の価格決定の違法を理由に国家賠償 | 最判平22.6.3 | 取消・無効確認の判決を先に得る必要はない。金銭を納付させる処分で取消しと同じ経済的効果が生じても同じ |
正しい。委任の範囲を超える命令に基づく処分は違法だが、その命令が長期間実務上疑いなく運用され裁判上も問題にされなかった事情の下では、監獄の長にとって委任の範囲を超えることが容易に理解できたとはいえず、過失がないから国家賠償責任は認められない(最判平3.7.9)。
国家賠償法1条1項の責任が成立するには、公務員の行為が違法であることに加えて故意又は過失が必要である。最判平3.7.9は、旧監獄法50条の委任に基づく同法施行規則120条等が14歳未満の者と在監者との接見を原則として許さないとしていた点について、法律の委任の範囲を超える無効の規定であるとし、これに基づく接見不許可処分を違法とした。しかし国家賠償責任については、当該規則が長年にわたって施行され、処分当時までその有効性について実務上特に疑いを差し挟む解釈をされたことも裁判上とりたてて問題とされたこともなく、当該訴訟の第一審・第二審も有効性を肯定していたという事情の下では、規則が委任の範囲を超えることが法令の執行者にとって容易に理解可能であったとはいえず、監獄の長が規則を無効と判断して接見を許可すべきであったとまでは予見できなかったとして、過失を否定した。処分の違法性と国家賠償法上の過失は別の要件であり、法令の解釈に無理からぬ点があるときは過失が否定され得る。肢はこの判示のとおりであり正しい。

本件処分当時までの間、これらの規定の有効性につき、実務上特に疑いを差し挟む解釈をされたことも裁判上とりたてて問題とされたこともなく(略)規則一二〇条(及び一二四条)が右の限度において法五〇条の委任の範囲を超えることが当該法令の執行者にとって容易に理解可能であったということはできない。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 所得税の更正が過大認定だった | 最判平5.3.11 | 処分の違法と国賠法上の違法は別。資料を収集し課税要件事実を認定する上で職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさず漫然と更正した場合に違法(職務行為基準説) |
| 建築確認をした建築物に欠陥があり所有者が損害 | 最判平25.3.26 | 建築確認制度は建築主の財産上の利益も保護する。職務上通常払うべき注意で申請書類を確認すれば不適合を発見できたのに漫然と看過した場合に違法(結論は責任否定) |
| 法律の委任の範囲を超える監獄法施行規則に基づく接見不許可 | 最判平3.7.9 | 規則は無効で処分は違法。しかし長年疑いなく運用され裁判上も問題にされなかったから、委任の範囲を超えることを容易に理解できたとはいえず、過失なし |
| 無罪が確定した被告人が起訴を違法と主張 | 最判昭53.10.20 | 無罪判決が確定しても起訴が直ちに違法になるわけではない。起訴時の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば適法 |
| 固定資産の価格決定の違法を理由に国家賠償 | 最判平22.6.3 | 取消・無効確認の判決を先に得る必要はない。金銭を納付させる処分で取消しと同じ経済的効果が生じても同じ |
正しい。予防接種禍では憲法29条3項の類推適用による損失補償を認めた下級審裁判例があるが、最高裁は国家賠償法1条による救済の枠組みで判断しており、損失補償による救済を明示的に認めた判例はない。
予防接種は社会全体を感染症から守るために実施されるが、担当医師に過失がなくてもまれに重い後遺障害が生ずる。適法で無過失の行為による生命・身体の被害は、違法と故意過失を要件とする国家賠償にも、財産権を前提とする損失補償にも乗りにくく、国家補償の谷間と呼ばれた。下級審には、財産権が補償されるなら生命・身体はなおさら保護されるべきだとして、憲法29条3項を類推適用し損失補償責任を認めた裁判例がある(東京地判昭59.5.18)。しかしその控訴審は損失補償の対象を財産権の侵害に限り、最高裁もこの構成を採っていない。最判平3.4.19は、予防接種によって重篤な後遺障害が発生した場合には、予診を尽くしたが禁忌事由を発見できなかったことや被接種者の個人的素因などの特段の事情がない限り、被接種者は禁忌者に該当していたと推定し、担当医師の過失を認定する形で国家賠償法1条による救済を図った。すなわち最高裁は、過失の推定という手法で国家賠償の土俵に載せたのであって、損失補償による救済を正面から認めた判例はない。本肢はこの状況を正確に述べている。

予防接種によって右後遺障害が発生した場合には、禁忌者を識別するために必要とされる予診を尽くしたが禁忌者に該当すると認められる事由を発見することができなかったこと、被接種者が右個人的素因を有していたこと等の特段の事情が認められない限り、被接種者は禁忌者に該当していたと推定するのが相当である。
- 国家賠償は違法性と故意過失が要件で、適法・無過失の行為には使えない
- 損失補償は適法な行為による損失が対象だが、憲法29条3項の条文は財産権を前提にしている
- 適法・無過失の行為による生命・身体の被害はどちらの要件からも外れ、国家補償の谷間と呼ばれる
- 下級審には憲法29条3項の類推適用で損失補償を認めた例があるが、最高裁は禁忌者該当の推定を通じて過失を認定し、国家賠償で救済した(最判平3.4.19)。損失補償を明示的に認めた最高裁判例はない
- 現在は予防接種法に基づく健康被害救済制度が置かれている
誤り。違うのは末尾の「立法不作為を理由とする国家賠償請求は認めなかった」の部分である。
本肢が引用する一節は最大判平17.9.14(在外日本人選挙権訴訟)の判文に実在するが、判決はその直後に「しかしながら」と例外を示しており、引用は途中で断ち切られている。同判決は、立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、憲法上保障されている権利行使の機会を確保するための立法措置が必要不可欠で、それが明白であるのに国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に国会議員の立法行為又は立法不作為が国賠法1条1項の適用上違法になるとした。その上で、昭和59年の法律案の廃案後、平成8年の総選挙まで10年以上立法措置が執られなかったことをこの例外に当たるとし、原告らに慰謝料各5000円の支払を命じて立法不作為を理由とする国家賠償請求を認容した。憲法の一義的な文言に違反するのにあえて立法する場合に限り違法とした最判昭60.11.21(在宅投票制度廃止事件)の基準を実質的に緩めた判決であり、本肢は結論を逆に述べている。

立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法一条一項の規定の適用上、違法の評価を受けるものというべきである。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 在宅投票制度を廃止して復活させなかった立法不作為 | 最判昭60.11.21(在宅投票制度廃止事件) | 立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらずあえて立法を行うような例外的な場合でない限り違法とならず、請求棄却 |
| 在外国民の選挙権行使を可能にする立法を10年以上怠った不作為 | 最大判平17.9.14(在外日本人選挙権訴訟) | 権利行使の機会の確保に必要不可欠で明白なのに正当な理由なく長期に怠った例外的な場合に当たるとして、慰謝料各5000円を認容 |
誤り。違うのは「立法不作為を理由とする国家賠償請求は認めなかった」の部分である。判例は引用部分の直後に「しかしながら」と続けて例外を示し、国家賠償請求を認容した。
肢が引用する一節は最大判平17.9.14の判文に実在するが、判例はその直後に「しかしながら」と続けている。すなわち、立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に国会議員の立法行為又は立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるという枠組みを示した。その上で、昭和59年に在外国民の投票を可能にする法律案が廃案となった後、平成8年の衆議院議員総選挙まで10年以上にわたり何らの立法措置も執られなかったことを著しい不作為として例外的な場合に当たるとし、過失も否定できないとして慰謝料各5000円の支払を命じ、立法不作為を理由とする国家賠償請求を認容した。肢は前段の違憲判断は正しいが、判文の前半だけを切り取って結論を逆にしている点が誤りである。

立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受ける。
- 選挙権の制限:国民の選挙権又はその行使を制限することは原則として許されず、制限にはやむを得ない事由が必要である。自ら選挙の公正を害する行為をした者等の選挙権の制限は別とされ、この厳格な枠組みの外に置かれている
- やむを得ない事由:制限なしには選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難な場合に限られる。国には行使を現実に可能にする措置を執る責務がある
- 違憲の判断:在外選挙の対象を当分の間両議院の比例代表選出議員の選挙に限定する公職選挙法附則8項の部分は、通信手段の発達により候補者情報の伝達が著しく困難とはいえないから、15条1項・3項、43条1項、44条ただし書に違反する
- 国家賠償:立法の内容や不作為が違憲でも国会議員の立法行為が直ちに違法になるわけではないが、権利行使の機会を確保する立法措置が必要不可欠で明白なのに正当な理由なく長期にわたり怠る場合などは例外的に違法になる。10年以上の不作為を著しい不作為として慰謝料を認容した
- 確認の訴え:次回の選挙で選挙権を行使できる地位の確認を求める公法上の当事者訴訟は適法で、請求を認容した
誤り。違うのは「公権力の行使には当たらず,…損害賠償請求をすることはできない」の部分である。行政指導も国家賠償法1条1項の公権力の行使に当たり、限度を超えた違法な指導は賠償の対象になる(最判平5.2.18)。
国家賠償法1条1項の「公権力の行使」は、国又は公共団体の作用のうち、純粋な私経済作用と同法2条の営造物の設置管理作用を除く一切の作用を含むと解するのが判例と通説であり、法的拘束力を持つ権力的作用に限られない。したがって、相手方の任意の協力を求める事実行為にすぎない行政指導も公権力の行使に当たり、行政指導として許される限度を超えて違法であり、担当公務員に故意又は過失があれば、国又は公共団体は同項に基づく賠償責任を負う。最判平5.2.18は、宅地開発に伴う教育施設負担金の寄付を求める行政指導について、水道の給水契約の締結拒否などを背景に事実上寄付を強制したものであって行政指導の限度を超え違法な公権力の行使に当たるとして、国家賠償請求を認めた。建築確認の申請に対して行政指導を続ける場面でも、建築主が不協力の意思を真摯かつ明確に表明した後に確認処分を留保し続けることは、特段の事情がない限り違法とされる(最判昭60.7.16)。本肢は、法的拘束力の有無で公権力の行使を絞る狭義説の立場をとる点で判例と異なる。

本件行政指導は、…行政指導の限度を超えるものであり、違法な公権力の行使であるといわざるを得ない。
- 狭義説:命令・強制を伴う権力的作用に限る。非権力的な行政活動は民法によることになる
- 広義説(判例・通説):純粋な私経済作用と、2条の営造物の設置管理作用を除く一切の公行政作用を含む。行政指導や公立学校の教育活動も入る
- 最広義説:私経済作用も含め、国・公共団体の活動のすべてを含む
正しい。17条の「公務員の不法行為」は公務員が職務として行った違法な行為一般を指し、作用が権力的か否かで被害者の救済を分けていない。
憲法17条は、何人も公務員の不法行為により損害を受けたときは、法律の定めるところにより国又は公共団体にその賠償を求めることができると定め、明治憲法下の国家無答責の法理を否定して被害者の救済を図る規定である。同条は「公務員の不法行為」と書くだけで、その作用を権力的なものに限る文言を置いておらず、命令や強制を伴う職務かどうかによる区別を予定していない。これを受けた国家賠償法1条1項の「公権力の行使」についても、判例と通説は、純粋な私経済作用と同法2条が対象とする営造物の設置管理作用を除くすべての作用を含むと広く解し、公立学校の教育活動や法的強制力を持たない行政指導のような非権力的作用にも同条の適用を認めている。被害者救済という17条の趣旨からすれば、国家の活動形式が権力的かどうかで救済の可否を分ける理由はなく、同条の「公務員の不法行為」には非権力作用によるものも含まれる。郵便法違憲判決(最大判平14.9.11)も、賠償責任を免除・制限する立法に憲法上の限界があるとしており、作用の性質で保障範囲を狭める態度は採っていない。

何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
| 作用 | 根拠 | 内容 |
|---|---|---|
| 公権力の行使(権力作用・非権力作用) | 国家賠償法1条 | 純粋な私経済作用と営造物の設置管理作用を除くすべての作用。公立学校の教育活動や行政指導も含む |
| 公の営造物の設置管理 | 国家賠償法2条 | 設置又は管理の瑕疵による損害を無過失で賠償する |
| 純粋な私的経済取引 | 民法(国家賠償法4条) | 私人と対等の当事者として結ぶ契約は、特段の事情のない限り私法の規律に従う |
誤り。違うのは「処分を行わないという行政庁の不作為が違法となることはない」の部分である。効果裁量があっても、権限の不行使が著しく不合理と認められるときは違法になる(最判平元.11.24)。
最判平元.11.24は、宅地建物取引業法に基づく業務停止や免許取消しが業者に対する不利益処分であることから、処分の選択や権限行使の時期は知事等の専門的判断に基づく合理的裁量に委ねられているとしつつ、具体的事情の下において知事等に監督処分権限が付与された趣旨・目的に照らし、その不行使が著しく不合理と認められるときでない限り、権限の不行使は取引関係者との関係で国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けないと判示した。その後、最判平16.4.27(筑豊じん肺訴訟)と最判平16.10.15(関西水俣病訴訟)は、規制権限を定めた法令の趣旨・目的や権限の性質に照らし、権限の不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くとして、実際に不行使を違法と判断している。処分をするかどうかの裁量は、法令が権限を与えた趣旨に沿って行使されることを前提にしたものであり、被害の発生が予見でき権限行使で回避できたのに放置することまで許す趣旨ではない。不作為が違法となることはないと言い切る本肢は、この判例の枠組みに反する。

具体的事情の下において、知事等に監督処分権限が付与された趣旨・目的に照らし、その不行使が著しく不合理と認められるときでない限り、右権限の不行使は、当該取引関係者に対する関係で国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 宅建業者への監督処分の不行使 | 最判平元.11.24 | 違法でない(著しく不合理といえない) |
| クロロキン製剤の副作用と厚生大臣の権限不行使 | 最判平7.6.23 | 違法でない |
| 炭鉱の粉じん規制の不行使(筑豊じん肺) | 最判平16.4.27 | 違法(許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠く) |
| 水俣病の排水規制の不行使(関西水俣病) | 最判平16.10.15 | 違法 |
| 石綿工場の規制の不行使(泉南アスベスト) | 最判平26.10.9 | 違法 |
正しい。職員の養育監護行為が県の公権力の行使に当たる公務員の職務行為とされるときは、職員個人が民法709条の責任を負わないだけでなく、使用者である社会福祉法人も民法715条の責任を負わない(最判平19.1.25)。
国家賠償法1条1項が適用される場合、公務員個人は被害者に対して直接民法709条の責任を負わないというのが確立した判例である。最判平19.1.25は、児童福祉法27条1項3号の措置により社会福祉法人の設置運営する児童養護施設に入所した児童に対する施設職員の養育監護行為は、本来都道府県が行うべき事務が委ねられたものであるから、国家賠償法1条1項の適用上、都道府県の公権力の行使に当たる公務員の職務行為と解すべきであるとしたうえで、国又は公共団体以外の者の被用者の行為が公権力の行使に当たるとして国又は公共団体が同項の責任を負う場合には、被用者個人が民法709条の責任を負わないのみならず、使用者も同法715条の責任を負わないと判示した。被用者である職員が不法行為責任を負わない以上、その責任を前提とする使用者責任も成立する余地がないからである。被害者は措置をしたD県に国家賠償を請求することになる。本肢は判例のとおりである。

国又は公共団体以外の者の被用者が第三者に損害を加えた場合であっても、当該被用者の行為が国又は公共団体の公権力の行使に当たるとして国又は公共団体が被害者に対して同項に基づく損害賠償責任を負う場合には、被用者個人が民法709条に基づく損害賠償責任を負わないのみならず、使用者も同法715条に基づく損害賠償責任を負わないと解するのが相当である。
- 1条1項の責任を負うのは、加害公務員の職務行為が帰属する行政主体(都道府県警察の警察官の捜査なら都道府県、最判昭54.7.10)
- 3条1項: 選任監督者・設置管理者と費用負担者が異なれば双方が責任を負う。費用負担者には実質的な負担者も含む(最判昭50.11.28)
- 3条2項: 賠償した者は内部関係で損害を負担すべき者に求償できる(最判平21.10.23)
- 公務員個人は被害者に直接責任を負わない(最判昭30.4.19)。故意・重過失があれば行政主体から求償される(1条2項)
- 国・公共団体以外の者の被用者の行為が公権力の行使に当たるときは、被用者個人も使用者も民法上の責任を負わない(最判平19.1.25)
誤り。違うのは「処分を行わないという行政庁の不作為が違法となることはない」の部分である。効果裁量があっても、権限の不行使が著しく不合理と認められるときは違法となる。
規制権限の根拠法令が処分をするかどうかを行政庁の裁量に委ねている場合、権限を行使しなかったことが当然に違法になるわけではないが、裁量に委ねられたことは不行使が常に適法であることを意味しない。最判平元.11.24は、宅地建物取引業法上の業務停止・免許取消しの権限について、処分の選択や権限行使の時期は知事等の専門的判断に基づく合理的裁量に委ねられているとしつつ、具体的事情の下において、知事等に監督処分権限が付与された趣旨・目的に照らし、その不行使が著しく不合理と認められるときは、権限の不行使が国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるとした。最判平16.4.27(筑豊じん肺訴訟)も、規制権限の不行使は、法令の趣旨・目的や権限の性質等に照らし、不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは違法となるとしている。規制権限は被規制者を制約する反面で国民の生命・身体・財産を守るために与えられているから、効果裁量があっても、不行使がその趣旨・目的に照らして著しく不合理であれば裁量権の逸脱として違法になる。

具体的事情の下において、知事等に監督処分権限が付与された趣旨・目的に照らし、その不行使が著しく不合理と認められるときでない限り、右権限の不行使は、当該取引関係者に対する関係で国家賠償法一条一項の適用上違法の評価を受けるものではない。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 宅建業者の不正で手付金を失った買主が、知事の監督処分の不行使を争った | 最判平元.11.24 | 著しく不合理とは認められず違法でない。免許制度は個々の取引関係者の保護を直接の目的としない |
| クロロキン製剤の副作用について厚生大臣が製造承認の取消し等をしなかった | 最判平7.6.23 | 著しく合理性を欠くとはいえず違法でない |
| 炭鉱労働者のじん肺について通産大臣が鉱山保安法の省令を改正しなかった | 最判平16.4.27(筑豊じん肺訴訟) | 昭和35年以降の不行使は許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠き違法 |
| 水俣病について国・県が水質二法・漁業調整規則の権限を行使しなかった | 最判平16.10.15(水俣病関西訴訟) | 昭和35年以降の不行使は著しく合理性を欠き違法 |
| 石綿工場の労働者について労働大臣が省令で防じん対策を義務づけなかった | 最判平26.10.9(泉南アスベスト訴訟) | 昭和33年以降の不行使は著しく合理性を欠き違法 |
正しい。被用者の行為が国又は公共団体の公権力の行使に当たり、国又は公共団体が国家賠償法1条1項の責任を負う場合には、被用者個人は民法709条の責任を負わず、使用者も民法715条の責任を負わない(最判平19.1.25)。
最判平19.1.25は、児童福祉法27条1項3号の措置により県が社会福祉法人の設置する児童養護施設に入所させた児童について、施設職員の養育監護行為は本来県が行うべき事務を委ねられて行うものであり、県の公権力の行使に当たる公務員の職務行為であるとした。そのうえで、国又は公共団体以外の者の被用者が第三者に損害を加えた場合であっても、その行為が公権力の行使に当たるとして国又は公共団体が1条1項の責任を負う場合には、被用者個人が民法709条の責任を負わないのみならず、使用者も民法715条の責任を負わないとした。国家賠償法1条1項は、公権力の行使に当たる公務員の加害行為について、国又は公共団体が公務員に代わって責任を負い、公務員個人は被害者に直接責任を負わないという仕組みを採っており、公務員個人が709条の責任を負わない以上、その者を被用者とする使用者責任も成り立たないからである。したがって、県が責任を負う本肢の場合、職員Eも法人Cも民法上の責任を負わない。

国又は公共団体以外の者の被用者が第三者に損害を加えた場合であっても、当該被用者の行為が国又は公共団体の公権力の行使に当たるとして国又は公共団体が被害者に対して同項に基づく損害賠償責任を負う場合には、被用者個人が民法709条に基づく損害賠償責任を負わないのみならず、使用者も同法715条に基づく損害賠償責任を負わない。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| A県警察の警察官が交通犯罪の捜査で違法に損害を加えた | 最判昭54.7.10 | 賠償責任を負うのは原則として当該都道府県で、国は原則として負わない |
| 国立公園内に県が設置したかけ橋の瑕疵。国が補助金で設置費用の2分の1近くを負担 | 最判昭50.11.28 | 法律上の負担義務がなくても、県と同等に近い費用を負担し事業を共同執行して危険を防止しうる国は3条1項の費用負担者として責任を負う |
| 県の措置で社会福祉法人の児童養護施設に入所した児童が職員の過失で負傷 | 最判平19.1.25 | 職員の養育監護は県の公権力の行使に当たり、県が1条1項の責任を負う。職員個人の709条責任も法人の715条責任も生じない |
| 国が賠償した後の内部負担 | 最判平21.10.23 | 3条2項の求償は、賠償の原因となった事務の経費を法令上最終的に負担すべき者に対してする |
誤り。違うのは「損失補償を請求できる」の部分である。公務員の故意又は過失による違法な行為で損害を受けた場合は、憲法17条・国家賠償法1条の国家賠償の問題である。
損失補償は、憲法29条3項を根拠として、適法な公権力の行使によって特定の者の財産に特別の犠牲が生じたときに、その損失を個人の負担とせず国民の一般的な負担に転嫁して公平を図る制度である。適法な行為を前提とするから、行為をした公務員の故意や過失は問題にならない。これに対し、公務員がその職務を行うについて故意又は過失によって違法に他人に損害を加えた場合は、憲法17条を受けた国家賠償法1条1項により、国又は公共団体が賠償責任を負う。違法な行為による損害を填補するのが国家賠償であり、適法な行為による損失を補うのが損失補償であって、両者は根拠も要件も異なる別の制度である。本肢の場面は、公務員の故意又は過失による違法な行為で財産権が侵害されたというものであるから、被害者が請求できるのは国家賠償であって損失補償ではない。本肢は二つの制度を混同している。なお、適法かつ無過失の行為で生命・身体に被害が生じた予防接種禍のように、どちらの制度にも当たりにくい事案が国家補償の谷間と呼ばれている。

何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
| 損失補償 | 国家賠償 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 憲法29条3項 | 憲法17条・国家賠償法1条1項 |
| 対象となる行為 | 適法な公権力の行使 | 違法な公権力の行使 |
| 故意・過失 | 不要 | 必要 |
| 填補するもの | 特定の者に生じた特別の犠牲を公平の見地から補う | 公務員の不法行為による損害を賠償する |
| 谷間 | 適法かつ無過失の行為で生命・身体に被害が生じた場合はどちらにも当たりにくい(予防接種禍) | 同左 |
誤り。違うのは「国家賠償法第1条第1項に基づき損害賠償を請求することはできない」の部分である。行政指導が法的拘束力のない事実行為であっても、それを理由とする確認の留保が違法となれば国家賠償の対象になる。
最判昭60.7.16は、建築主が行政指導に応じられない旨の意思を真摯かつ明確に表明した後は、行政指導が行われているというだけの理由で確認処分を留保することは原則として違法となり、建築主の不協力が社会通念上正義の観念に反するといえる特段の事情がない限り、国家賠償法上も違法の評価を受けるとした。行政指導自体は任意の協力を前提とする事実行為で法的拘束力を持たないが、そのことは、指導を理由に申請への応答を遅らせる措置が当然に適法になることを意味しない。任意であるはずの指導に事実上従わせるために確認を留保するなら、任意性の限度を超えた違法な公権力の行使になる。国家賠償法1条1項の「公権力の行使」は私経済作用と営造物の設置管理作用を除く一切の行政作用を含むと解され、行政指導もその中に入るから、最判平5.2.18も、指導が任意の協力を求める限度を超えて事実上従うことを余儀なくさせれば国家賠償責任が生ずるとした。Xは審査終了後も4か月以上10回を超える話合いを求められており、不協力の意思を明確にした後の留保について賠償を請求し得る。

建築主が右のような行政指導には応じられないとの意思を明確に表明している場合には、かかる建築主の明示の意思に反してその受忍を強いることは許されない筋合のものであるから、建築主が受ける不利益と右行政指導の目的とする公益上の必要性とを比較衡量して、右行政指導に対する建築主の不協力が社会通念上正義の観念に反するものといえるような特段の事情が存在しない限り、行政指導が行われているとの理由だけで確認処分を留保することは、違法であると解するのが相当である。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 住民との話合いを求める指導を理由に建築確認を留保 | 最判昭60.7.16(品川マンション事件) | 建築主が任意に応じている間の社会通念上合理的な期間の留保は違法でないが、不協力の意思を真摯かつ明確に表明した後の留保は、特段の事情がない限り国家賠償法上も違法 |
| 給水拒否を背景に教育施設負担金の寄付を求める指導 | 最判平5.2.18(武蔵野市教育施設負担金事件) | 任意の協力を求める限度を超え事実上従うことを余儀なくさせたもので、違法な公権力の行使として国家賠償責任を負う |
| 行政指導の根拠 | 最大判平7.2.22(ロッキード事件丸紅ルート) | 行政機関は任務ないし所掌事務の範囲内で明文の根拠がなくても指導、勧告、助言等ができ、それは職務権限に基づく職務行為である |
正しい。最判昭62.2.6は、国家賠償法1条1項の「公権力の行使」には公立学校における教師の教育活動も含まれると明言した。
国家賠償法1条1項の「公権力の行使」について、判例と通説は、国又は公共団体の作用のうち純粋な私経済作用と同法2条の対象となる営造物の設置管理作用を除いた一切の作用を含むとする広義説に立つ。この立場では、処分のような権力的作用だけでなく、行政指導や教育活動のような非権力的な公行政作用も「公権力の行使」に入る。公立学校の教育活動は、地方公共団体が学校教育法などに基づいて公教育として営む作用であり、生徒は在学関係のもとで教師の指導監督に服する立場にあるから、私人間の役務提供と同じには扱えない。最判昭62.2.6は、公立中学校の体育の授業で教師がプールのスタート台からの飛び込みを指導した際に生徒が頭部を打って重い傷害を負った事案で、国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」には公立学校における教師の教育活動も含まれると述べ、教師の指導上の注意義務違反を理由に学校を設置する地方公共団体の責任を判断した。課外のクラブ活動中の事故も同じ枠で扱われ、賠償責任を負うのは地方公共団体であって、加害公務員である教師個人が被害者に直接責任を負うことはない。

国家賠償法一条一項にいう「公権力の行使」には、公立学校における教師の教育活動も含まれるものと解するのが相当である。
- 広義説(判例・通説): 純粋な私経済作用と2条の営造物の設置管理作用を除く一切の公行政作用を含む。狭義説(権力的作用に限る)は採らない
- 含まれる例: 公立学校の教育活動(最判昭62.2.6)、行政指導(最判平5.2.18)、規制権限の不行使などの不作為
- 含まれない例: 公立病院の医療行為のような私経済作用(民法709条・715条で処理)、道路や河川の設置管理(2条で処理)
- 公務員: 身分ではなく公権力の行使を委ねられているかで決まる。児童福祉法の措置で入所した児童養護施設の職員も含む(最判平19.1.25)
誤り。違うのは「公務員が権限行使の意思をもって行為をした場合に限られ、公務員が自己の利を図る意図をもって行為をした場合は、これに当たらない」の部分である。最判昭31.11.30は、客観的に職務執行の外形を備えていれば自己の利を図る意図でも「その職務を行うについて」に当たるとした。
国家賠償法1条1項は、公務員が「その職務を行うについて」違法に他人に損害を加えたことを要件とする。最判昭31.11.30は、この要件について、公務員が主観的に権限行使の意思をもってした職務執行につき違法に他人に損害を加えた場合に限らず、自己の利をはかる意図をもってした場合でも、客観的に職務執行の外形をそなえる行為をしてこれによって他人に損害を加えた場合には、国又は公共団体に賠償責任を負わせて広く国民の権益を擁護するのが同法の趣旨だと述べた。事案は、非番の警察官が制服を着て職務質問を装い通行人から金品を奪って殺害したものであり、判決は国の責任を認めた。行為の外形から職務執行と見える以上、相手方はそれを公務として受け入れざるを得ない立場に置かれるのであって、公務員の内心の意図という被害者には知り得ない事情で国の責任の有無を左右させるのは相当でない。この外形標準説のもとでは権限行使の意思は要件ではなく、外形を備えるかどうかを客観的に見る。したがって、権限行使の意思がある場合に限り、自己の利を図る意図の場合は当たらないとする本肢は判例に反する。

公務員が主観的に権限行使の意思をもつてした職務執行につき違法に他人に損害を加えた場合に限らず、自己の利をはかる意図をもつてした場合でも、客観的に職務執行の外形をそなえる行為をしてこれによつて、他人に損害を加えた場合には、国又は公共団体に損害賠償の責を負わしめて、ひろく国民の権益を擁護することをもつて、その立法の趣旨とするものと解すべきである。
- 外形標準説(最判昭31.11.30): 公務員の内心の権限行使の意思は問わず、客観的に職務執行の外形を備えていれば足りる。非番の警察官が制服で職務質問を装った強盗殺人でも国が責任を負う
- 趣旨: 相手方は外形から職務執行と信じて受忍せざるを得ず、内心の意図は被害者に知り得ないから、広く国民の権益を擁護する
- 職務に当たる例: 議員の議場での一般質問は内容を問わず職務行為(最判平9.9.9は公務員個人の責任も否定)
- 公務員個人の責任: 故意・重過失があっても被害者に直接の責任を負わず、国又は公共団体が求償できるにとどまる(1条2項)
誤り。違うのは「Xは、当該指導が行われていることを理由に建築確認が遅延させられたのは違法であると主張して、国家賠償法第1条第1項に基づき損害賠償を請求することはできない」の部分である。
行政指導が法的拘束力のない事実行為であることと、それに起因する損害について国家賠償を求められるかは別の問題である。国家賠償法1条1項の「公権力の行使」は、純粋な私経済作用と国家賠償法2条の対象を除く非権力的な行政活動を広く含むと解されており、行政指導もこれに当たる。最判昭60.7.16(品川マンション事件)は、建築主が行政指導にはもはや協力できないとの意思を真摯かつ明確に表明し確認申請に対する応答を求めているときは、不協力が社会通念上正義の観念に反するといえる特段の事情がない限り、行政指導が行われているとの理由だけで確認処分を留保することは違法であるとし、これは建築主が国家賠償を求めた事案で述べられた。行政指導そのものについても、最判平5.2.18(武蔵野市教育施設負担金事件)は、行政指導として許容される限度を超えて事実上強制した場合は違法な公権力の行使に当たるとして国家賠償責任を認めている。Xは審査終了後も6か月にわたり確認を留保されており、確認の遅延が違法であると主張して国家賠償法1条1項に基づく請求をすることができる。

建築主が受ける不利益と右行政指導の目的とする公益上の必要性とを比較衡量して、右行政指導に対する建築主の不協力が社会通念上正義の観念に反するものといえるような特段の事情が存在しない限り、行政指導が行われているとの理由だけで確認処分を留保することは、違法である。
正しい。規制権限の不行使は、その権限を定めた法令の趣旨、目的や権限の性質等に照らし、具体的事情の下で許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときに、国家賠償法1条1項の適用上違法となる(最判平16.10.15)。
行政庁に規制権限が与えられている場合に、その権限を行使しなかったことが国家賠償法1条1項の適用上違法となるかについて、判例は、権限を行使するかどうかが行政庁の裁量に委ねられていることを前提に、その裁量の不行使が限度を超えたときに違法とする枠組みを採る。最判平16.10.15(水俣病関西訴訟)は、国又は公共団体の公務員による規制権限の不行使は、その権限を定めた法令の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、具体的事情の下において、その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、その不行使により被害を受けた者との関係において同項の適用上違法となると述べ、水俣病の原因物質等がおおむね解明された時点以降に水質二法の規制権限を行使しなかったことを著しく合理性を欠くとして国と県の責任を認めた。同じ規範はクロロキン薬害(最判平7.6.23)と筑豊じん肺(最判平16.4.27)でも用いられている。本肢はこの判例の枠組みをそのまま述べている。

国又は公共団体の公務員による規制権限の不行使は、その権限を定めた法令の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、具体的事情の下において、その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、その不行使により被害を受けた者との関係において、国家賠償法1条1項の適用上違法となるものと解するのが相当である。
| 訴訟 | 裁判所が原告を勝たせる要件 | 条文・判例 |
|---|---|---|
| 取消訴訟 | 裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったとき | 行政事件訴訟法30条 |
| 義務付け訴訟 | 処分をしないことが裁量権の範囲を超え又は濫用となるとき | 37条の2第5項・37条の3第5項 |
| 差止訴訟 | 処分をすることが裁量権の範囲を超え又は濫用となるとき | 37条の4第5項 |
| 懲戒処分の取消し | 社会観念上著しく妥当を欠き裁量権を濫用したと認められるときに限る(判断代置はしない) | 最判昭52.12.20 |
| 規制権限不行使の国家賠償 | 不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くとき | 最判平16.10.15 |
誤り。違うのは「行政指導が国家賠償法第1条第1項にいう「公権力の行使」に当たることはない」の部分である。行政指導も公権力の行使に当たり、違法なら国家賠償の対象になる(最判平5.2.18)。
行政指導が指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいうとする前半は、行政手続法2条6号の定義どおりである。しかし、処分に当たらない非権力的な事実行為であることから、国家賠償法1条1項の「公権力の行使」に当たらないという結論は導けない。同項の「公権力の行使」は、国又は公共団体の純粋な私経済作用と2条の対象となる営造物の設置管理作用を除く一切の作用を含むと解するのが判例・通説であり、行政指導は法的拘束力こそないものの、許認可権限などを背景に相手方へ事実上強い影響を及ぼす公行政の活動であるから、これに含まれる。最判平5.2.18(武蔵野市教育施設負担金事件)は、指導要綱に従わない事業者には給水等を拒む姿勢を背景として教育施設負担金の寄付を事実上強制した市の行為を、本来任意に寄付を求めるべき行政指導の限度を超える違法な公権力の行使であるとして、市の国家賠償責任を認めた。行政指導だから公権力の行使に当たることはないと言い切る本肢は誤りである。

指導要綱に基づく行政指導が、武蔵野市民の生活環境をいわゆる乱開発から守ることを目的とするものであり、多くの武蔵野市民の支持を受けていたことなどを考慮しても、右行為は、本来任意に寄付金の納付を求めるべき行政指導の限度を超えるものであり、違法な公権力の行使であるといわざるを得ない。
- ["狭義説", "命令・強制を伴う権力的作用に限る。非権力的な行政活動は民法による"]
- ["広義説(判例・通説)", "純粋な私経済作用と、2条の営造物の設置管理作用を除く一切の公行政作用を含む。行政指導や公立学校の教育活動も含まれる"]
- ["最広義説", "私経済作用も含め、国・公共団体の活動のすべてを含む"]
- ["行政指導の例", "武蔵野市教育施設負担金(最判平5.2.18)は、給水拒否を背景に寄付を事実上強制した行政指導を違法な公権力の行使とした"]
誤り。違うのは「その後判例を変更し、国会で議決された法律が違憲であれば国家賠償法上も違法の評価を受けることになるという立場を採るに至った」の部分である。判例は変更されていない。
最判昭60.11.21(在宅投票制度廃止事件)は、国会議員は立法に関し原則として国民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまるとしたうえで、国会議員の立法行為は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき例外的な場合でない限り、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けないとした。最大判平17.9.14(在外日本人選挙権訴訟)は、憲法上の権利の違法な侵害が明白な場合や、必要不可欠な立法措置を国会が正当な理由なく長期にわたって怠る場合に例外的に違法の評価を受けると述べて枠組みを具体化し、賠償を認めた。しかし同判決は、立法の内容又は立法不作為が憲法に違反するとしても、そのゆえに立法行為が直ちに違法の評価を受けるものではないとし、昭和60年判決と異なる趣旨をいうものではないと自ら明言している。法律の違憲性と立法行為の違法性を区別する立場は最大判平27.12.16や最大判令4.5.25でも維持されており、本肢のいう判例変更はない。

仮に当該立法の内容又は立法不作為が憲法の規定に違反するものであるとしても、そのゆえに国会議員の立法行為又は立法不作為が直ちに違法の評価を受けるものではない
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 在宅投票制度を廃止し復活させなかった立法行為 | 最判昭60.11.21 | 憲法の一義的な文言に違反するのにあえて立法するような例外的な場合でない限り違法とならない。請求棄却 |
| 在外国民の選挙権行使を制限した公職選挙法の立法不作為 | 最大判平17.9.14 | 権利侵害が明白な場合や必要不可欠な立法を正当な理由なく長期に怠る場合は例外的に違法。賠償認容。昭60判決と異なる趣旨ではないと明言 |
| 女性の再婚禁止期間(100日超の部分が違憲) | 最大判平27.12.16 | 違憲だが、違憲が明白とはいえず立法不作為は違法でない。請求棄却 |
| 在外国民の最高裁裁判官国民審査権の制限 | 最大判令4.5.25 | 違憲で、立法不作為も違法。賠償認容 |
誤り。違うのは「その後判例を変更し,国会で議決された法律が違憲であれば国家賠償法上も違法の評価を受けることになるという立場を採るに至った」の部分である。最大判平17.9.14は昭和60年判決と異なる趣旨をいうものではないと明言しており、判例変更はない。
最判昭60.11.21(在宅投票制度廃止事件)は、国会議員の立法行為は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというような例外的な場合でない限り、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けないと判示した。その後、最大判平17.9.14(在外日本人選挙権訴訟)は、権利の違法な侵害が明白な場合や、必要不可欠な立法措置を国会が正当な理由なく長期にわたって怠る場合などには例外的に違法の評価を受けるとして、判断枠組みをより具体的に示した。しかし同判決は、立法の内容又は立法不作為が憲法に違反するとしても、そのゆえに国会議員の立法行為又は立法不作為が直ちに違法の評価を受けるものではないとし、この判断は昭和60年判決と異なる趣旨をいうものではないと自ら述べている。法律の内容の違憲性と立法行為の国家賠償法上の違法性とを区別する立場は変更されておらず、最大判平27.12.16や最大判令4.5.25でも維持されている。

国会議員の立法行為は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき、容易に想定し難いような例外的な場合でない限り、国家賠償法一条一項の規定の適用上、違法の評価を受けない
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 郵便法が書留郵便物の損害について国の賠償責任を免除・制限 | 最大判平14.9.11(郵便法違憲判決) | 17条は立法府への白紙委任ではない。故意・重過失の場合まで免責する部分は裁量の範囲を逸脱し違憲 |
| 在宅投票制度を廃止し復活させなかった立法行為 | 最判昭60.11.21 | 国会議員は国民全体に対し政治的責任を負うにとどまる。憲法の一義的な文言に違反するのにあえて立法した例外的な場合でない限り国家賠償法上違法ではない |
| 在外国民の選挙権行使を制限した公職選挙法の規定 | 最大判平17.9.14(在外日本人選挙権訴訟) | 権利の違法な侵害が明白な場合や、必要不可欠な立法を正当な理由なく長期に怠った場合は例外的に違法。昭和60年判決と異なる趣旨ではないと明言 |
| 女性の再婚禁止期間のうち100日超の部分 | 最大判平27.12.16 | 規定は違憲だが、違憲であることが明白だったとはいえず、立法不作為は国家賠償法上違法ではない |
誤り。違うのは「「公権力の行使」には当たらない」の部分であり、指定確認検査機関の確認は建築主事の確認とみなされる建築基準法上の権限の行使であって、国家賠償法1条1項の公権力の行使に当たる。
国家賠償法1条1項の公権力の行使について、判例・通説は、純粋な私経済作用と、同法2条の対象となる公の営造物の設置管理作用を除く一切の公行政作用を含むとする広義説に立つ。建築確認は、建築主の計画が建築基準関係規定に適合するかを審査し、適合すると認めたときに確認済証を交付する行為であり、確認を受けなければ工事に着手できないという法的効果を建築主に与える処分である。建築基準法6条の2第1項は、国土交通大臣又は都道府県知事の指定を受けた指定確認検査機関の確認と確認済証を、建築主事の確認と確認済証とみなすと定める。株式会社Aが私人であっても、その確認は建築主事が行うのと同じ法律上の権限の行使であり、私経済作用でも営造物の管理作用でもないから、公権力の行使に当たる。公権力の行使であるかどうかは、行為の主体が公務員法上の公務員か私人かではなく、その行為が法律に基づく公行政作用として行われているかで決まる。

前条第一項各号に掲げる建築物の計画(略)が建築基準関係規定に適合するものであることについて、(略)国土交通大臣又は都道府県知事が指定した者の確認を受け、国土交通省令で定めるところにより確認済証の交付を受けたときは、当該確認は前条第一項の規定による確認と、当該確認済証は同項の確認済証とみなす。
- 狭義説:命令・強制を伴う権力的作用に限る。非権力的な行政活動は民法によることになる
- 広義説(判例・通説):純粋な私経済作用と、2条の営造物の設置管理作用を除く、一切の公行政作用を含む。学校の教育活動(最判昭62.2.6)や行政指導(最判平5.2.18)も含まれる
- 最広義説:私経済作用も含め、国・公共団体の活動のすべてを含む
- 私人が法律により公の事務を委ねられて行う行為(指定確認検査機関の確認、児童養護施設の養育監護)も公権力の行使に当たる
正しい。国家賠償法1条1項の公務員は公務員法上の身分を持つ者に限られず、公権力の行使を委ねられた私人も含まれるから、指定確認検査機関の確認検査員Bは確認検査を行う限りで公務員に当たり得る。
国家賠償法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときの賠償責任を定める。ここでいう公務員は、国家公務員法や地方公務員法上の公務員の身分を持つ者を意味するのではなく、公権力の行使を委ねられてこれを行う者を広く指す。公権力の行使に伴う損害を国や公共団体に負担させる趣旨からは、身分ではなく権限の委任の有無で決まるからである。判例も、児童福祉法に基づく措置により社会福祉法人の児童養護施設に入所した児童に対する施設職員の養育監護行為を、県の公権力の行使に当たる公務員の職務行為とした(最判平19.1.25)。建築基準法77条の24第1項は、指定確認検査機関は確認検査を行うときは確認検査員に確認検査を実施させなければならないと定めており、Bは株式会社Aの従業員という私人の身分のまま、法律上の権限である確認検査を実施する。したがってBが本件確認を行う限りにおいて、国家賠償法1条1項の公務員に当たる場合がある。

国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
誤り。違うのは「C市に株式会社Aに対する監督義務違反がない場合は,Dは,国家賠償法第1条第1項に基づく賠償を受けられない」の部分であり、国家賠償法1条1項には民法715条1項ただし書のような監督上の免責規定がなく、Bの故意又は過失があれば監督義務違反の有無にかかわらず責任が生じる。
国家賠償法1条1項の責任は、判例・通説の代位責任説によれば、公権力の行使に当たる公務員が職務を行うについて故意又は過失により違法に他人に損害を加えた場合に、本来その公務員が負うべき責任を国又は公共団体が代わって負うものである。責任の成立要件は、公務員の職務行為であること、故意又は過失、違法性、損害と因果関係であり、国や公共団体自身の過失や監督上の落ち度は要件になっていない。民法715条1項ただし書は、使用者が被用者の選任及び事業の監督について相当の注意をしたときは使用者責任を免れると定めるが、国家賠償法1条にはこのような免責規定が置かれていない。公務員個人への直接の請求を認めない代わりに、国や公共団体が監督の程度にかかわらず責任を引き受けて被害者を確実に救済する構造だからである。したがって、確認検査員Bの本件確認に故意又は過失があれば、確認事務が帰属するC市は、株式会社Aに対する監督義務を尽くしていたかどうかにかかわらず、Dに対して賠償責任を負う。

国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。/前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。
| 国家賠償法1条 | 民法715条(使用者責任) | |
|---|---|---|
| 責任の性質 | 代位責任(判例・通説) | 代位責任 |
| 免責 | 免責規定なし。監督義務を尽くしても免責されない | 選任・監督に相当の注意をしたときは免責(1項ただし書) |
| 加害者個人の責任 | 被害者に対して直接責任を負わない(最判昭30.4.19) | 被用者も709条で責任を負う |
| 求償 | 故意又は重大な過失があるときに限る(2項) | 信義則上相当な限度で可(3項) |
誤り。違うのは末尾の「立法の不作為についてまで国家賠償法上違法であるとの評価を受けることはない」の部分であり、判例は立法不作為についても例外的に国家賠償法上違法の評価を受ける場合を認めている(最大判平17.9.14)。
最判昭60.11.21は、国会議員は立法に関して国民全体に対する政治的責任を負うにとどまり個別の国民の権利に対応した法的義務を負わないから、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというような容易に想定し難い例外的な場合でない限り、立法行為は国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けないとした。最大判平17.9.14は、在外国民の選挙権行使を制限していた公職選挙法の規定と立法の不作為が争われた事案でこの枠組みを発展させ、立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法行為又は立法不作為は違法の評価を受けると述べ、実際に立法不作為を違法として賠償を認めた。本肢の前半は判例に沿うが、立法不作為を一律に違法評価の対象から外す後半が判例に反する。

立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けるものというべきである。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 在宅投票制度の廃止と不復活 | 最判昭60.11.21 | 立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているのにあえて立法する等の例外的な場合でない限り違法とならない。請求棄却 |
| 在外国民の選挙権制限と立法不作為 | 最大判平17.9.14 | 権利侵害が明白な場合や、必要不可欠で明白な立法措置を正当な理由なく長期に怠る場合は違法。立法不作為を違法とし賠償を認容 |
| 女性の再婚禁止期間(100日超過部分) | 最大判平27.12.16 | 規定は違憲だが、違憲が明白であったとはいえず国家賠償法上は違法でない |
| 精神的原因による投票困難者への立法不作為 | 最判平18.7.13 | 立法措置が必要不可欠で明白であったとはいえず違法でない |
誤り。違うのは「最高裁判所は損失補償による救済を認めている」の部分であり、最高裁は予防接種の後遺障害について国家賠償法1条1項の過失の認定を通じて救済しており、損失補償による救済を認めた最高裁判例はない(最判平3.4.19)。
予防接種は感染症から社会全体を守るために法律に基づいて行われるから、適法な接種で重い後遺障害が残った者は、公共のために特別の犠牲を被ったといえる。しかし憲法29条3項は私有財産を公共のために用いる場合の規定であり、生命・身体の被害に正面から及ぶ条文ではない。下級審には29条3項の類推適用で補償を認めた裁判例があるが、その控訴審は損失補償の対象は財産権の侵害に限られるとして否定しており、最高裁がこの構成を採用したことはない。最判平3.4.19は、予防接種によって重篤な後遺障害が発生した場合には、必要な予診が尽くされたが禁忌事由を発見できなかったことなどの特段の事情がない限り、被接種者は禁忌者に該当していたと推定するのが相当であると述べ、禁忌者の推定を通じて接種を担当した医師の過失を認め、国家賠償法1条1項による救済の道を開いた。適法・無過失の行為による生命・身体の被害という国家補償の谷間を、最高裁は損失補償ではなく過失の推定という国家賠償の側から埋めている。本肢は救済の根拠を損失補償とする点で誤りである。

予防接種によって右後遺障害が発生した場合には、禁忌者を識別するために必要とされる予診が尽くされたが禁忌者に該当すると認められる事由を発見することができなかったこと、被接種者が右個人的素因を有していたこと等の特段の事情が認められない限り、被接種者は禁忌者に該当していたと推定するのが相当である。
- 国家賠償:違法性と故意過失が要件。接種した医師に落ち度がなければ使えない
- 損失補償:適法な行為による損失が対象だが、憲法29条3項は財産権を前提にしており、生命・身体の被害を正面から扱っていない
- 谷間の事案:適法・無過失の行為による生命・身体の被害。下級審には29条3項の類推適用で補償を認めた例があるが、最高裁は採用していない
- 最高裁の救済:重篤な後遺障害が生じたときは禁忌者に該当していたと推定し、予診を尽くさなかった過失を認めて国家賠償法1条1項で救済する(最判平3.4.19)
誤り。違うのは「当該処分の違法を理由とする国家賠償請求訴訟において当該処分をしたことに違法がない旨を主張することは,許されないものとされている」の部分である。
取消判決の既判力は訴訟物である処分の違法性一般に及び、処分が違法であったことは後訴で争えなくなる。しかし最判平5.3.11は、所得税の更正処分が取消訴訟で取り消された後の国家賠償請求について、税務署長のする更正は所得金額を過大に認定していたとしてもそのことから直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく、税務署長が資料を収集し課税要件事実を認定・判断する上で職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と更正をしたと認め得るような事情がある場合に限り違法の評価を受けるとした。国家賠償法上の違法は、処分の法規適合性ではなく公務員の職務行為が職務上の法的義務に違反したかで判断されるから、取消訴訟で確定した処分の違法とは概念が異なり、取消判決の既判力は国家賠償請求訴訟における違法の判断には及ばない。したがって被告は、処分は取り消されたが職務上の注意義務違反はなかったと主張でき、本肢は判例の立場とずれている。

税務署長のする所得税の更正は、所得金額を過大に認定していたとしても、そのことから直ちに国家賠償法一条一項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく、税務署長が資料を収集し、これに基づき課税要件事実を認定、判断する上において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と更正をしたと認め得るような事情がある場合に限り、右の評価を受けるものと解するのが相当である。
| 取消訴訟 | 国家賠償請求訴訟 | |
|---|---|---|
| 違法の意味 | 処分が法規に適合しているか | 公務員が職務上尽くすべき法的義務に違反したか(職務行為基準説、最判平5.3.11) |
| 既判力の関係 | 取消判決で処分の違法が確定 | 処分の違法が確定しても、国賠法上の違法は別に判断される |
| 取消判決の先行 | 不要。国賠訴訟で処分の違法を主張できる(最判昭36.4.21) | 同左 |
| 違法の判断時 | 処分時 | 行為時 |
正しい。刑事補償法5条1項は補償を受けるべき者が国家賠償法により損害賠償を請求することを妨げないと定め、刑事補償は公務員の故意・過失を要件としないのに対し、国家賠償は故意・過失を要件とする。
憲法40条は、抑留又は拘禁された後に無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより国にその補償を求めることができると定める。これを具体化した刑事補償法1条1項は、通常手続や再審などで無罪の裁判を受けた者が未決の抑留又は拘禁を受けた場合に、国に対して補償を請求できるとしており、捜査や訴追に当たった公務員の故意・過失を要件としていない。抑留や拘禁が適法に行われたものであっても、結果として無罪となった者が受けた不利益を公平の見地から補填する制度だからである。これに対し国家賠償法1条1項は、公権力の行使に当たる公務員が職務を行うについて故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたことを要件とする。両者は要件も性質も異なるので、刑事補償法5条1項は、補償を受けるべき者が国家賠償法その他の法律の定めるところにより損害賠償を請求することを妨げないと定め、併せて請求することを認めている。本肢は両制度の関係と要件の違いを正しく述べている。

この法律は、補償を受けるべき者が国家賠償法その他の法律の定めるところにより損害賠償を請求することを妨げない。
| 刑事補償(40条・刑事補償法) | 国家賠償(17条・国家賠償法1条1項) | |
|---|---|---|
| 要件 | 抑留又は拘禁の後に無罪の裁判を受けたこと | 公務員が職務を行うについて故意又は過失によって違法に損害を加えたこと |
| 公務員の故意・過失 | 不要 | 必要 |
| 性質 | 結果に対する公平の見地からの補償 | 不法行為に基づく損害賠償 |
| 併用 | 刑事補償法5条1項により国家賠償の請求を妨げない | 同左 |
正しい。規制権限の不行使は、権限を定めた法令の趣旨・目的や権限の性質等に照らし、具体的事情の下でその不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときに、国家賠償法1条1項の適用上違法となる(最判平16.4.27)。
最判平16.4.27(筑豊じん肺訴訟)は、国又は公共団体の公務員による規制権限の不行使は、その権限を定めた法令の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、具体的事情の下において、その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、その不行使により被害を受けた者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法となると判示した。規制権限を行使するかどうかは行政庁の裁量に委ねられているのが通常であるが、法令が権限を与えた目的は国民の生命・健康等の保護にあるから、裁量権があるといっても、その不行使が保護目的からみて許容限度を超えるほど不合理であれば、被害者との関係で違法と評価されるという理屈である。同判決はこの基準を用いて、通商産業大臣が鉱山保安法上の省令改正権限等を行使しなかったことを違法と判断した。同じ基準は最判平7.6.23(クロロキン訴訟)でも示されており、水俣病関西訴訟(最判平16.10.15)でも国と県の規制権限不行使が違法とされた。本肢は判旨をそのまま述べており正しい。

国又は公共団体の公務員による規制権限の不行使は、その権限を定めた法令の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、具体的事情の下において、その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、その不行使により被害を受けた者との関係において、国家賠償法1条1項の適用上違法となるものと解するのが相当である。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| クロロキン網膜症(医薬品の副作用) | 最判平7.6.23 | 許容限度を逸脱して著しく合理性を欠くときに違法。本件は違法でない |
| 筑豊じん肺(鉱山保安法の省令改正権限) | 最判平16.4.27 | 省令改正権限等の不行使が違法 |
| 水俣病関西訴訟(水質保全法・県漁業調整規則) | 最判平16.10.15 | 国と県の規制権限不行使がいずれも違法 |
| 宅建業者の監督権限(免許更新・業務停止) | 最判平1.11.24 | 免許制度は業者の資力保証を目的としないので、権限不行使は違法でない |
誤り。違うのは「条理上も,行政機関に行政指導についての作為義務が生ずることはない」の部分である。行政指導は事実行為であっても、具体的事情の下では条理上その作為義務が認められることがある。
行政指導は法律の根拠を要しない事実行為であり、行うかどうかは原則として行政機関の判断に委ねられている。しかし国家賠償法1条1項の違法性の判断においては、権限不行使の違法の根拠となる作為義務は法令に明文の規定がある場合に限られず、慣習や条理に基づくものも含まれると解されている。裁判例も、医薬品による重大な被害の発生が予見でき、それを回避する手段が行政指導以外にない状況では、厚生大臣が製薬業者に対し被害回避のため必要最小限度の指導、勧告をすることが義務となる場合があることを認め、また行政作用法上の根拠規定なく行われる行政指導のような事実行為についても、公務員がこれを行わないことが具体的事情の下で著しく不合理であるときは職務上の法的作為義務に違反すると判断している。行政指導が任意の協力を求めるものにすぎないことは、指導を受ける側の義務がないことを意味するだけで、国民の生命・健康を守る任務を負う行政機関の側が指導すべき義務を負うかどうかは別の問題だという理屈である。本肢は事実行為であることから作為義務の成立を全面的に否定しており誤りである。

国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
誤り。違うのは後半の「当該公務員に故意又は重過失がある場合には、国及び当該公務員のいずれもが被害者に対し直接に責任を負う」の部分である。
最判昭30.4.19は、公権力の行使に当たる公務員がその職務を行うについて違法に他人に損害を与えた場合には、国又は公共団体が賠償の責に任ずるのであって、公務員個人はその責任を負わないとした。国家賠償法1条1項は国が自ら責任を引き受ける構造をとり、公務員個人への求償は同条2項が故意又は重過失の場合に限って国と公務員の内部関係として認めるにとどまる。故意又は重過失は被害者が公務員個人を直接訴える根拠ではなく、国が支払った後に公務員へ求償できるかどうかの区切りにすぎない。最判昭53.10.20も、故意又は重過失があれば加害公務員個人に対する請求を妨げないという主張を排斥している。本肢は求償権の要件を、被害者に対する直接責任の要件へと読み替えている点で誤っている。

公権力の行使に当る国の公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を与えた場合には、国が賠償の責に任ずるのであつて、公務員が行政機関としての地位において賠償の責任を負うものではなく、また公務員個人もその責任を負うものではない。
- ["被害者への責任", "国又は公共団体のみが負う(1条1項)。公務員個人は過失の程度を問わず直接責任を負わない"]
- ["公務員への求償", "故意又は重過失があるときに限り、国が公務員に求償できる(1条2項)"]
- ["軽過失の場合", "国が賠償し、公務員への求償もできない"]
正しい。行政指導は法的拘束力を持たないが、任意の協力を求める限度を超えて事実上の強制に至れば、国家賠償法1条1項の違法な公権力の行使になる。
最判平5.2.18(武蔵野市教育施設負担金事件)は、市が宅地開発指導要綱に基づき、マンション建設業者に対し教育施設負担金の納付を求めた行政指導について、市が要綱に従わない者に水道の給水契約の締結や下水道の使用を拒否する態度をとっていたことなどから、業者は指導に従うことを余儀なくされていたとし、市の行為は本来任意に寄付金の納付を求めるべき行政指導の限度を超えるものであり、違法な公権力の行使であるとして、損害賠償請求を棄却した原審の判断を破棄した。国家賠償法1条1項の公権力の行使は、純粋な私経済作用と同法2条の営造物の管理を除く公行政作用を広く含むと解されており、行政指導も公務員がその職務として行う限りこれに当たる。行政指導は法的拘束力がなく国民の権利利益を直接変動させないが、その運用の態様によって相手方に損害を与えれば、違法性が認められて賠償責任を生じさせる。本肢はこの関係を正確に述べている。

右行為は、本来任意に寄付金の納付を求めるべき行政指導の限度を超えるものであり、違法な公権力の行使であるといわざるを得ない。
- ["法律の根拠", "個別の作用法の根拠は不要だが、任務・所掌事務の範囲内に限られる(行手法32条1項)"]
- ["任意性", "相手方の任意の協力によってのみ実現され、従わないことを理由に不利益な取扱いをしてはならない(32条2項)"]
- ["申請との関係", "申請者が従う意思がないことを表明したときは、指導を継続して申請者の権利行使を妨げてはならない(33条、最判昭60.7.16)"]
- ["国家賠償", "限度を超えた指導は国賠法1条の違法な公権力の行使になる(最判平5.2.18)"]
正しい。判例は、国会議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情がある場合に限り、国家賠償法1条1項の違法が認められるとした(最判平9.9.9)。
最判平9.9.9は、国会議員が委員会での質疑において特定の個人の名誉を低下させる発言をしたことにつき、国の国家賠償責任が争われた事件である。同判決は、質疑等は多数決原理による統一的な国家意思の形成に密接に関連するものであり、国民の間に存する多元的な意見及び諸々の利益を反映させるべく、あらゆる面から質疑等を尽くすことが国会議員の職務ないし使命に属するとした。そして、質疑等においてどのような問題を取り上げ、どのような形でこれを行うかは国会議員の政治的判断を含む広範な裁量に委ねられているから、質疑等によって結果的に個別の国民の権利等が侵害されることになったとしても、直ちに国会議員が職務上の法的義務に違背したとはいえないとした。国の損害賠償責任が肯定されるためには、当該国会議員が、その職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示し、あるいは虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、特別の事情があることを必要とする。本肢はこの判示に沿う。

国会議員が国会で行った質疑等において、個別の国民の名誉や信用を低下させる発言があったとしても、これによって当然に国家賠償法一条一項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が生ずるものではなく、右責任が肯定されるためには、当該国会議員が、その職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示し、あるいは、虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、国会議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があることを必要とする
正しい。17条の不法行為を民法上の不法行為と同義と解すれば、17条は過失による場合の賠償請求権も保障していることになり、これを故意の場合に限定する改正を憲法違反と解することは明らかに誤っているとはいえない。
17条は、何人も、公務員の不法行為により損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体にその賠償を求めることができると定める。本肢の見解は、ここにいう不法行為を民法上の不法行為と同義と解するものである。民法709条の不法行為は故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した場合に成立するから、この見解によれば、17条は公務員に過失がある場合についても賠償請求権を保障していることになる。さらにこの見解は、公権力の行使について賠償を請求するには民法以外の特別の法律が必要であるとするから、国家賠償法1条が請求の根拠であり、民法の規定によって補うことはできない。そうすると、国家賠償法1条を改正して公務員に故意がある場合にのみ賠償請求権が発生すると定めた場合、過失による公権力の行使については賠償を求める途がなくなり、17条が保障する範囲を法律が切り縮めることになる。17条は法律に白紙委任をしたものではないから、この見解からは当該改正は憲法違反と解される。

何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
誤り。違うのは「自己責任であると解すると,公務員個人に対する賠償請求権は否定され,他方,代位責任であると解すると,公務員個人に対する賠償請求権は否定されない」の部分である。論理的な対応は逆であり、代位責任と解すると公務員個人への請求は否定され、自己責任と解すると当然には否定されない。
国家賠償法1条1項の責任の性質については、代位責任説と自己責任説がある。代位責任説は、不法行為責任は本来加害行為をした公務員個人が負うべきものであるが、国又は公共団体がこれを公務員に代わって負担するものと解する。この説によれば、公務員個人の責任は国又は公共団体が肩代わりしているのであるから、被害者が重ねて公務員個人に賠償を請求することは否定されるという帰結に結びつく。これに対し自己責任説は、公権力の行使に伴う危険を引き受けている国又は公共団体が、公務員個人の責任とは無関係に、自らの責任として賠償責任を負うものと解する。この説によれば、国又は公共団体の責任と公務員個人の民法上の不法行為責任は別個のものであるから、公務員個人に対する賠償請求が当然に否定されることにはならず、両者が併存し得る。本肢は二つの説と公務員個人に対する請求の可否との対応を逆にしている。判例は、国又は公共団体が賠償の責めに任ずるのであって公務員個人はその責任を負わないとしている(最判昭30.4.19)。

国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
| 代位責任説 | 自己責任説 | |
|---|---|---|
| 責任の捉え方 | 公務員個人が負うべき責任を国又は公共団体が代わって負う | 国又は公共団体が自らの責任として負う |
| 公務員個人への賠償請求(論理的な帰結) | 否定される。責任は国又は公共団体が肩代わりしている | 当然には否定されない。公務員個人の責任と併存し得る |
正しい。国会自体の組織的行為の評価を論ずれば足りるとする立場では、個々の議員の演説、討論、表決の責任を問うことにならないから、51条は国家賠償責任追及の法的障害とはならず、明らかに誤っているとはいえない。
51条は、両議院の議員は議院で行った演説、討論又は表決について院外で責任を問われないと定める。国会議員も17条及び国家賠償法1条1項にいう公務員に含まれるから、議員の議院における表決等を捉えて国の賠償責任を問うことが、免責特権に抵触しないかが問題となる。国家賠償責任を、個々の議員の行為が違法であることを前提に国がその責任を負うものと構成すると、責任の成否を判断するために個々の議員の表決等の当否を審理することになり、51条との緊張が生じ得る。これに対し、本肢の立場は、立法は合議体としての国会の行為であるから、国家賠償法1条1項の適用上も、国会自体の組織的行為が違法と評価されるかを論ずれば足りるとする。この立場では、個々の議員の演説、討論、表決を取り出してその責任を問うことにならないから、51条が保障する議員個人の免責は害されない。また、51条が免除するのは議員個人の責任であって、国の賠償責任まで免除する規定ではない。したがって、この立場を採れば51条は国家賠償責任追及の障害とはならない。

両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。
誤り。違うのは「国会において議決された法律が違憲であれば,立法過程における国会議員の立法活動の当否にかかわらず,当該立法行為は,国家賠償法第1条第1項の適用上も違法となる」の部分である。判例は、立法内容の違憲性と国家賠償法上の違法性とを区別している(最判昭60.11.21)。
在宅投票制度廃止事件(最判昭60.11.21)は、国会議員の立法行為が国家賠償法1条1項の適用上違法となるかどうかは、国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかの問題であって、当該立法の内容の違憲性の問題とは区別されるべきであるとした。そして、国会議員は、立法に関しては、原則として国民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり、個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うものではないから、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき、容易に想定し難いような例外的な場合でない限り、違法の評価を受けないとした。その後、在外日本人選挙権訴訟(最大判平17.9.14)は、権利侵害が明白な場合や、必要不可欠な立法措置を正当な理由なく長期にわたって怠る場合にも例外的に違法となるとしたが、立法内容の違憲と国家賠償法上の違法とを区別する考え方は維持している。

国会議員は、立法に関しては、原則として、国民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり、個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うものではないというべきであつて、国会議員の立法行為は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき、容易に想定し難いような例外的な場合でない限り、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けない
誤り。違うのは「少なくとも公務員が主観的に権限行使の意思をもってする場合であることを要する」の部分と、「国又は公共団体が賠償責任を負うことはない」の部分である。
最判昭31.11.30は、非番の警察官が専ら自己の利を図る目的で職務執行を装い、不審尋問のうえ所持品を預かって連行の途中に被害者を射殺した事案で、国家賠償法1条は公務員が主観的に権限行使の意思をもってする場合に限らず、自己の利を図る意図をもってする場合でも、客観的に職務執行の外形を備える行為をしてこれによって他人に損害を加えたときは国又は公共団体に賠償責任を負わせ、広く国民の権益を擁護する趣旨であるとして、公共団体の責任を認めた。被害者は公務員の内心を知り得ず、外形を信頼して従った以上、その危険は公務員を使う側が負うべきだからである。したがって「その職務を行うについて」は客観的な外形で判断され、権限行使の意思は要件ではない。さらに判例は、国家賠償の責任を負うのは国又は公共団体であって公務員個人は被害者に対して責任を負わないとしており(最判昭30.4.19)、本肢が「公務員個人の損害賠償責任が生ずるにとどまり」とする点も逆である。

公務員が主観的に権限行使の意思をもつてする場合にかぎらず自己の利をはかる意図をもつてする場合でも、客観的に職務執行の外形をそなえる行為をしてこれによつて、他人に損害を加えた場合には、国又は公共団体に損害賠償の責を負わしめて、ひろく国民の権益を擁護することをもつて、その立法の趣旨とするものと解すべきである。
- 判断基準: 公務員の内心ではなく、客観的に職務執行の外形を備えるかで見る(最判昭31.11.30)
- 権限行使の意思は要件ではなく、自己の利を図る意図でも外形があれば職務関連性が認められる
- 責任を負うのは国又は公共団体であり、公務員個人は被害者に直接の責任を負わない(最判昭30.4.19)
- 公務員に故意又は重大な過失があるときは、国又は公共団体から公務員への求償が生じるにとどまる(国賠法1条2項)
誤り。違うのは「監督処分権限の不行使が著しく不合理と認められる場合でも、当該権限の不行使は国家賠償法第1条第1項の適用上違法の評価を受けるものではない」の部分である。
最判平元.11.24は、宅地建物取引業法の免許制度は、免許を付与した業者の人格・資質等を一般的に保証し、ひいては業者の不正な行為により個々の取引関係者が被る具体的な損害の防止、救済を直接の目的とするものとはにわかに解し難いとしつつ、監督処分権限の行使は知事等の専門的判断に基づく合理的裁量に委ねられているから、業者の不正な行為により取引関係者が損害を被った場合であっても、具体的事情の下において、知事等に監督処分権限が付与された趣旨・目的に照らしその不行使が著しく不合理と認められるときでない限り、権限の不行使は取引関係者に対する関係で国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないとした。この判示は、著しく不合理と認められるときには不行使が違法となる余地を残す言い回しであり、法の目的が個々の取引関係者の保護でないことから違法の可能性を一切否定したものではない。本肢は、判例が留保した例外を切り落とし、著しく不合理な場合でも違法にならないと言い切っている点で判例と異なる。

具体的事情の下において、知事等に監督処分権限が付与された趣旨・目的に照らし、その不行使が著しく不合理と認められるときでない限り、右権限の不行使は、当該取引関係者に対する関係で国家賠償法一条一項の適用上違法の評価を受けるものではない。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 宅建業者への監督処分の不行使 | 最判平元.11.24 | 著しく不合理といえず違法でない(財産上の損害・自衛の手段あり) |
| クロロキン製剤の副作用と薬事法上の権限不行使 | 最判平7.6.23 | 当時の知見の下では著しく合理性を欠くとはいえず違法でない |
| 筑豊じん肺と鉱山保安法の省令改正権限の不行使 | 最判平16.4.27 | 昭35以降の不行使は許容される限度を逸脱し著しく合理性を欠き違法 |
| 関西水俣病と水質二法・漁業調整規則の権限不行使 | 最判平16.10.15 | 国・県ともに昭35.1以降の不行使は違法 |
誤り。違うのは「行政指導に関して国家賠償法第1条による損害賠償責任が発生することはない」の部分である。
最判平5.2.18(武蔵野市教育施設負担金事件)は、市が宅地開発指導要綱に基づき、マンション建設の事業主に教育施設負担金の寄付を求め、これに従わなければ給水契約の締結や下水道の使用を拒む旨の指導要綱の定めを背景に納付を求めた事案で、市の行為は行政指導に従うことを余儀なくさせるものであり、事業主に教育施設負担金の納付を事実上強制しようとしたものであって、本来任意に寄付金の納付を求めるべき行政指導の限度を超える違法な公権力の行使であるとし、損害賠償請求を棄却した原審の判断を破棄した。行政指導は相手方の任意の協力によって実現される事実行為であるが、国家賠償法1条1項の「公権力の行使」は、純粋な私経済作用と同法2条の対象を除く公行政作用を広く含むと解されており、行政指導もこれに当たる。したがって、行政指導が任意性を失わせる態様で行われ、その限度を超えて相手方に損害を与えたときは、国又は公共団体は国家賠償責任を負う。本肢は行政指導の任意性から賠償責任の発生を一律に否定しており、判例と異なる。

右行為は、本来任意に寄付金の納付を求めるべき行政指導の限度を超えるものであり、違法な公権力の行使であるといわざるを得ない。




